慶大・学生食堂「山食」の危機<1>学生が消え廃業を覚悟
白いコック帽をキリリとかぶり、調理場を泳ぐように動き回ってテキパキと仕事をこなす。81歳とは思えない立ち居振る舞いと誰からも慕われる人柄で、東京・港区にある慶応義塾大学三田キャンパスの人気者。創業84年の学生食堂「山食」3代目、谷村忠雄さんだ。
「コック見習で入社した16歳からここで働いていますが、今までの65年間でこれほど危機的な状況になったのは初めてです」
温和な笑顔が一転、不安な表情に変わる。コロナ禍によるオンライン授業などでキャンパスから学生や教員の姿が消えておよそ1年。それに伴い食堂の利用者数が激減しているのだ。名物学生食堂を襲った感染拡大の影響は、昨年2月から出てきたという。
「学部入試が終わった2月中旬からパタッと来なくなって……。特に7、8月はほとんど売り上げがなかった。今も8割減が続いています」