菅政権はワクチン争奪戦で惨敗 接種率0.04%はG20ワースト

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 新型コロナウイルスワクチンの第4便(49万7250人分)が8日、成田空港に到着した。過去3便と合わせ、確保した数量はまだ約118万人分だ。来週以降も順次到着する見込みだが、コロナ患者の治療に当たる医療従事者480万人分と高齢者3600万人分の確保には遠く及ばない。争奪戦に“惨敗”した日本のワクチン接種は、世界から大きく取り残されている。

■ファイザーに足元見られ曖昧契約

 今のところ、政権の「頼みの綱」は米ファイザー社製のワクチンだけ。厚労省に承認申請している米モデルナと英アストラゼネカの2製品は「早ければ5月か、6月に薬事承認が出る可能性がある」(田村厚労相)というが、医療従事者分と高齢者分をファイザー製でカバーしようとしているのが現状だ。

 この「一本足」交渉では相手に足元を見られても仕方ない。昨夏にファイザーとの間で「2021年6月末までに6000万人分」の供給で基本合意したはずが、今年1月20日発表の正式契約では、「21年以内に7200万人分」に後退。入手時期が最大で半年近くズレ込むことになった。

 肝心の契約書の中身もワクチン確保が「コミット(確約)」ではなく、「ベストエフォート(最大限の努力)」に過ぎない。供給時期や数量の詳細は詰められなかったというから驚きだ。「超売り手市場」で強気のファイザーに主導権を握られ、日本側は押し切られてばかりである。

 1月に1瓶で注射6回分の前提が5回分しか取れないと判明。共同通信によると、河野ワクチン担当相が「1瓶5回分で7200万人分の確保」を目指し、交渉の前面に出たところ、ファイザー側から「首相を出して欲しい」と突っぱねられたというから情けない。

現状ベースでは調達に1年4カ月かかる計算

 ファイザーにいいようにあしらわれた結果、世界的な「争奪戦」に惨敗。ワクチン接種は他の先進国から大幅に立ち遅れた。

 英オックスフォード大が運営する統計データサイト「アワー・ワールド・イン・データ」によると、日本の100人当たりのワクチン接種率は0.04%(8日時点)。G7中でワースト1位(別表参照)。対象をG20に広げても、1%に満たないのは他に韓国(0.61%)やオーストラリア(0.3%)、南アフリカ(0.12%)のみ。中でも日本はダントツの最下位だ。西武学園医学技術専門学校東京校校長の中原英臣氏(感染症学)がこう言う。

「ファイザーとの交渉内容は“ブラックボックス”にせよ、報道の限りでは、現政権に交渉力がないことはよく分かりました。そもそも、医学的な知見のない大臣がワクチン調達の交渉の矢面に立っていること自体、不自然です」

 ワクチン供給が予定通りにいけば、今月は最大133万人分、来月は513万人分が到着する見込み。だが、政府が目標に掲げる「6月末までに高齢者分の配送完了」のハードルはかなり高い。

 医療従事者と高齢者をカバーするには、確保見込みを除いて約3434万人分足りない。仮に5月、6月の2カ月間にワクチンが「毎週」空輸されるとしても、第4便と同量だと、1年4カ月かかる計算だ。“公約”達成には1回につき約381万5000人分が必要である。

 争奪戦に敗れ、世界からも置いてけぼり――。もはや菅政権は限界だ。

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