定着してきた「ダイバーシティー」日本の職場での懸念とは

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 ここ数年で「ダイバーシティー」という言葉が定着してきた。多様な人材の活用のことで、企業においてもジェンダーやLGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー)、障害、エスニシティー(民族性)を分け隔てなく受け入れる取り組みがなされている。だが、次々に登場する“カタカナ言葉”に理解が追い付けていないビジネスマンも多いのではないか。

 ◇  ◇  ◇

 これまで性差の言葉といえば、「男女」や「LGBT」ぐらいだった。ところが今は、そもそも「性別がない」や「全性愛者」などの考え方もある。

 モデルの井手上漠さん(18)のフォトエッセー「normal?」が話題だ。

 この春上京したばかりの売り出し中ながら、先月の発売前から予約が殺到し、現在もアマゾンランキング1位(随筆カテゴリー)を維持している。

 2018年の高校1年生の時に“かわいすぎるジュノンボーイ”として注目を浴びると、当時から本人は「性別はないです」と主張してきた。

 井手上さんのような「性別はない」「自分に当てはまる性別が存在しない」という人たちは、「アジェンダー」と呼ばれる。

 一方、語呂が似ている「アポジェンダー」というのは、「自分に性別がない」と感じるだけではなく、「性別という概念自体が分からない」と考える人だそうだ。

 また、海外でカミングアウトが増えているのが「ノンバイナリー」だ。性自認が男性と女性の間にあるとか、時に男性でも女性でもないとか、どちらでもあるといった、いわゆる男女の典型的な二分論(バイナリー)に当てはまらない人を総称する呼び方で、日本では「Xジェンダー」とも言われる。

 英歌手のサム・スミスや、Netflixのリアリティー番組「クィア・アイ」で人気のジョナサン・ヴァン・ネスがノンバイナリーと公表している。

 その際、敬称はMs.やMr.ではなく、「Mx.(ミクス)」で表記、米カリフォルニア州では19年1月から運転免許証や身分証明書などで、ノンバイナリーを自分の性別として選択できる法律が施行された。現在は米国の13州で選択できるという。

 世界でも、パスポートなどで法的にノンバイナリーを選べる国は、カナダ、ドイツ、インド、ネパール、バングラデシュ、パキスタン、オーストラリア、ニュージーランド、オーストリア、アイスランドがある。

トヨタが新卒採用で性別欄を「任意」に

 これに比べると大幅に遅れている日本もようやく今年4月、厚労省が履歴書の「性別欄」に男女の選択肢を設けず、「記載は任意または未記載も可能」とする様式例を発表し、企業に活用を促している。これに先立って文具メーカーのコクヨは、昨年末から「性別欄」を削除した履歴書も販売している。

 採用活動では、昨年からユニリーバ・ジャパンが新卒・中途採用の履歴書から性別の記入と顔写真の提出をやめている。名前も名字のみの記入にし、性別や容姿などによる、先入観のない採用を目指すためだという。トヨタ自動車の22年卒業予定の新卒採用でも、ウェブ上での応募フォームで性別回答を「任意」とした。

 性自認が戸籍上の性別とは異なる人だけでなく、「性別がない」という人が声を上げられるようになれば、職場はどう変わるのか。

「日本はジェンダー全般に対する対応が世界でも遅れています。性別欄の削除は第一歩ではありますから、たとえば女性も面接時に結婚や出産にとらわれず、職業選択が自由になります。一方で、懸念もあります。入社時にジェンダーについての意識を共有しないわけですから、入社後に体力的に限界のある仕事を割り当てられたり、トランスジェンダー(ノンバイナリー)であることを知った社員からのアウティング(第三者に噂などをする嫌がらせ)で悩む事例は増えるかもしれません。社会の風土を定着させるにはまだ日本では時間がかかるでしょう」(ビジネススキル研究所の鶴田慎一代表)

■日本IBM本社に25カ所の「誰でもトイレ」

 物理的にはトイレや更衣室の問題がある。すでに日本IBMが本社に25カ所の「誰でもトイレ」を設置したように、「共有トイレ(多目的)を中心にし、更衣室は着替えが必要な場合は共有のロッカールームの横に個室の更衣室を造ったり、空き会議室を使用したり、制服の選択や廃止するといった対応が求められています」(鶴田慎一代表)。

 整備は整えられたとして、セクハラ問題は複雑化する。結婚や出産の話題をしてはいけないのは当然として、女性に「重い荷物持って大丈夫?」などと気遣う声掛けもご法度だ。性差で「私には荷物も運べないと思っているの?」と邪推されてハラスメント認定されかねないという。

「相手に声を掛ける時も『ノンバイナリー』の概念も視野に入れて考えなければなりません。『くん』『さん』の呼び方ではなく、名字の〇〇さんとして接します。物理的に性差が気になっても、できるできないは本人の申し出を聞いて、やれる人にやらせるという考えが求められます。現実的には力仕事や危険が伴う仕事など人間では采配が難しい役割はAIロボットがより活躍する世の中になる可能性はありますが、本来の解決ではありません」(明大講師の関修氏=心理学)

 ホテルやデパートの受付ロボットは女性的な柔らかい声や動きで「歓迎の雰囲気」を出していたり、警備ロボットは男性的な威圧感を演出したりしている。世界では「ロボットにジェンダーはいらない」という議論も起きている。

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