大坂なおみは適応障害によるうつ状態か 症状とSOSの伝え方

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 ファンが見ていたNAOMIは、本当の姿ではなかったのか。女子テニス世界2位の大坂なおみ(23)が全仏オープン2回戦を前に棄権を発表したほか、うつ病だったことを明らかにし、話題を呼んでいる。じわじわと追い詰められた末のSOSだったのか。

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 大坂が自らのSNSに衝撃告白を投稿したのは先月31日。「ほかの選手や私自身の健康のため、そして選手がテニスに集中できるように、私が棄権することが最善の方法。邪魔者だけにはなりたくない」と棄権の理由を語ったのに続き、「2018年の全米(優勝)以降、長い間、うつ病に悩まされ、その対処に本当に苦労してきた」とつらさを打ち明けている。

 その前の日、姉のまりさん(25)は、妹が1回戦突破後の会見を拒否したことについて、投稿サイト「Reddit」で経緯を説明。「なおみは多くの場合、自分の行動を説明するのが苦手なんです」と妹のシャイで人見知りな一面に触れながらつづっていた。

 姉の投稿はすでに削除されているが、欧米メディアが続報。波紋を広げている。

 姉は、人前で話すのが苦手なシャイぶりを強調するが、思い出されるのは18年の全米だ。決勝をストレートで破ったS・ウィリアムズは、審判のジャッジに毒づいて、ラケットを折って暴れる始末で、観客全員が大坂の優勝に大ブーイングする中での表彰式だった。

“完全アウェー状態”のインタビューでの大坂の言葉が観客を引きつけていった。

「みんな彼女を応援していたのを知っている。こんな終わり方ですみません。ただ試合を見てくれてありがとうございます。本当にありがとう」

 憧れのウィリアムズにお辞儀をし感謝の言葉を重ねるにつれて、観客は沈黙。一転して自分への大歓声に変えた。姉が言うように、根はシャイなのかもしれないが、状態がよければ観客も世界中のテレビ視聴者をもクギづけにする当意即妙の返しができるのが大坂だ。

深キョンと同じ適応障害の可能性

 その後3つのメジャータイトルを加え、優勝のたびにスピーチでファンを魅了している。昨年2月のフェド杯スペイン戦では、コート上で泣き出したこともあるが、うつ病告白に驚いたファンは少なくないだろう。ストレスケア日比谷クリニックの酒井和夫院長が「あくまでも私見」とした上でこう言う。

深田恭子さんの休養宣言でも話題になりましたが、大坂さんも適応障害の可能性があるかもしれません。一気に世界ランクを駆け上がり、マスコミ対応に不慣れなまま、18年に全米OPを制覇。それで世界の注目をさらに集めたことは、人見知りな性格にはとても強いストレスです。しかし、トップアスリートである以上、ある程度はマスコミ対応が必要。そのストレスがじわじわと彼女の精神を追い詰め、うつ状態に至った可能性はあると思います。適応障害によるうつ状態が、本格的なうつ病に移行することはありますが、うつ病の人がスポーツの試合をするのは難しい。その点からも、適応障害によるうつ状態で、うつ病とは違うと思います」

 適応障害は、仕事や家庭などの特定の状況のストレスが、その人に耐えがたく感じたとき、抑うつ状態や不安、緊張などを起こす病気だ。仮に大坂が適応障害によるうつ状態なら、特定の状況のストレスは、テニス全般ではなく、マスコミ対応になるだろう。

 全仏の舞台は、大坂に苦手意識があるといわれるクレーコートで、姉は削除前の投稿でこんなことを記していた。

「(報道陣が相次いでクレーの不成績を問い続けることで)彼女の自信は完全に打ち砕かれ、『自分はクレーが苦手だ』と思っていたのだと思います」

 姉の指摘通りなら、思い詰めた妹は初戦を突破したことで更に嫌みな質問にさらされることを恐れたのかもしれない。

自分も周りも気づきにくい症状の幅広さ

 で、この適応障害、サラリーマンにとっても、侮れない病気だ。その場合、パワハラ上司や能力を超えた仕事が、大坂にとってのマスコミのようにじわじわと精神を追い詰める要因になる。その症状は、必ずしも抑うつ状態に限らない。幅広いから厄介だ。

①抑うつ中心―気分が落ち込む、ヤル気がない、涙もろくなる

②不安中心―焦燥感、緊張、神経過敏、怒り

③身体症状中心―不眠、起きられない、頭痛、腹痛、めまい、倦怠感

 たとえば、同僚や後輩の前でパワハラ上司に罵倒されるのはつらい。そんなイジメが何度となく続くと、追い込まれた人は「数字を上げられるように、もっと頑張らないと」と不安になる。その不安感が仕事への焦りを生み、焦りが強ければ強いほど、ベッドに横になっても眠れず……。

「適応障害による抑うつ状態は、症状のひとつなのは間違いありません。しかし、サラリーマンの場合、不安を中心とした症状や身体症状が先に表れることもあり、自分がうつ状態とは思いにくいし、周りも気づきにくい。不安の裏返しは怒りで、その怒りが『オマエも、オレのことバカにするのか』『部長、ふざけやがって』などと周りやパワハラ上司などに向かえばなおさらでしょう」(酒井院長)

 そんな状態が続くと、あるときつらくなり、落ち込む。波を繰り返しながら、症状が悪化するという。

「仮に上司との関係がつらくても、定時で社外に出たり、週末に遊んだりしているときは、ストレス源から離れているので症状が軽くなったり、なくなったりすることも珍しくありません。適応障害の教科書的には、ストレス源のひとつとしてパワハラが挙げられますが、生理的に苦手な相手だと、善意もストレスになりかねないでしょう。そんな事情も重なって、この病気の気づきにくさを助長しているのです」(酒井院長)

 上司をはじめとする組織の人間関係や仕事の重さがつらくても、会社に雇われている立場上、「上司が嫌です」とも「この仕事はできません」とも言いだしにくい。サラリーマンが、大坂みたいに「棄権」を会社に訴えるのは難しい。では、SOSを出すにはどうするか。

「不眠や頭痛などの身体症状は、薬による対症療法で改善します。問題はそれでも不安や抑うつ状態がよくならないときです。そうすると、会社に行きたくない気持ちが芽生えてきます。そうなったら、心療内科や精神科にかかることです。この病気の改善には、休養と環境の調整が欠かせません。で、診断書をもとに主治医から会社にうつ状態による休養を要請。復職に際しては、問題となる上司などがいない部署やかかわりのない仕事での復帰をかけ合ってもらうのです。それがSOSになります」(酒井院長)

 適応障害は、ストレス源さえなくなると元気になり、受診する気力もある。医師との受け答えもハッキリしているが、悪化して本格的なうつ病になると、受診もしんどくなり、説明もうまくできなくなる。怪しい人は、心療内科などを受診して医師のサポートを受けるのが無難だろう。

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