大阪府の不都合な事実 休業協力金支給まで群を抜いて長い
見せられた文書には大阪府、愛知県、東京都、神奈川県などと書かれ、その右側に「入金までに掛かった期間」と書かれている。「期間」は、「規制開始」「規制解除」「申請日」と分かれている。
「これは、新型コロナの休業協力金が支払われるまでの期間を都道府県別に出したもの」と提供者は説明した。その人は全国で飲食店を経営する企業の関係者だ。文書はその内部資料だった。大阪府を見ると、協力金は申請してから10.8週かかっている。つまり申請しても、2カ月余りは協力金なしということだ。他はどうか? 東京都は申請日から2.4週。愛知県は4.9週で支払われている。資料からは、大阪府が群を抜いて長く時間がかかっていることがわかる。
これは大阪府にとって不都合な事実だ。そのトップ、吉村知事とは毎日放送の「よんチャンTV」で2度、話をした。私は吉村知事を評価していないわけではない。批判はあるが、さまざまな取り組みをしているのも事実だ。発信力もある。一方で、協力金の遅れは知事の責任であることは否定できない。
協力金の遅れについて吉村知事は手続きの簡素化を約束した。しかし、飲食店の側の不安、不満、不信は、既にその言葉だけではぬぐい切れない状態だ。5月26日の番組で、知事が覚悟を示すべきではないかと問うた。そのやりとりを報じたメディアによると私は、「実務派の知事だが(メッセージが)現状、届いていない。求められるのは、もっと強いメッセージ。延長で休業要請に応じたところを『潰さない』と明確に言ってほしい」と言っている。
その前に、「知事は課長クラスが説明するような細かい説明をされてそれが良い点でもあるが、今の苦境にある飲食店には届かない」という内容を話していたはずだが、その辺ははしょっているのだろう。
無批判に吉村知事を持ち上げるメディアに暗澹
加えて前段がある。番組では、アルコール提供を控えるとの要請に応じない店主や客が取材に応じていた。要請に応じない側が堂々とテレビに出るという状況は過去にはなかった。つまり、行政の要請が人々に届かなくなっている。その状況を踏まえてのやりとりだった。
報道によると吉村知事は、「いろんな企業、飲食店がある。それを完全補償するとなると、無責任には言えません。コメンテーターではないので」と語り、「大阪府の財源で、お札を刷る力もない中で倒産、閉鎖させませんと言うこと自体、無責任では」と語った。
面白いのは記事の書き方だ。私を「牽制し」、私の「要望」を「一蹴した」と書いている。リードでは、私「からの“無茶振り”を毅然とした態度で突っぱねた」と書いて吉村知事を持ち上げている。
吉村知事としては、メッセージより実務が大事ということなのだろう。それは理解しないわけではない。しかし、冒頭の数字が示す大阪府の実態は飲食店側にとっては深刻だ。覚悟を示した方が良い時もあるのではないか。それが私の問いだった。そこに変化を期待した。それにしても、単に吉村知事を持ち上げるだけのメディアの存在には暗澹とさせられる。
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