<11>「自宅墓」は老人ホームへの持ち込み、樹木葬への改葬もできる
葬式、火葬が終わる。その後、「四十九日」をメドに納骨するのが一般的だ。ところが、「去年から遺骨が動かない」と霊園業者が言う。納骨で親戚が集まると感染リスクが高まる。墓地への移動もためらわれる。コロナ禍で納骨が先延ばしにされているのだ。
日本の火葬率は99.99%。宗教上の理由により土葬するイスラム教徒以外、ほぼ火葬だが、骨を埋葬しなければならない法律はない。納骨の先延ばしが、さらに「遺骨をずっと家に置く」ことを選択肢のひとつにさせたようだ。
■男性の購入が多い「自宅墓」
「全骨の自宅墓『棲家』を一昨年に売り出したところ、昨年から問い合わせが増え、月1~2基ペースで売れています」と、老舗石材店「松戸家」(東京都小平市)営業部の戸塚森比古さん。
同社は墓地墓石・樹木葬を主軸に「自宅墓」も販売してきた。従来の自宅墓は分骨形式やペンダントなどに加工する「手元供養」を指したが、家具調仏壇に似た形の「棲家」は全骨収納。これひとつで完結する。サイズは高さ56×幅40×奥行き33センチ。1霊用29万8000円。工夫すれば何霊でも収納でき、遺影も花も飾れる。松戸家が設けた樹木葬墓地へ無料で改葬できる権利付きだ。「先々、老人ホームに持って行く」という70代男性の購入が多いという。