小沢一郎「隠居には早いよ」という天の声だろうと気持ちを持ち直した

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小沢一郎(立憲民主党・衆議院議員)

 衆院選で議席を減らし敗北した立憲民主党は、泉健太新代表に交代したものの世論調査の政党支持率は低迷したまま、党勢挽回に至っていない。「共産党との野党共闘が失敗だった」という大メディアのネガティブキャンペーンにいまだ右往左往だが、大ベテランのこの人は選挙結果をどう見たのか。現職最多の18回目の当選ながら、自身も初めて小選挙区で敗れ、比例復活の屈辱を味わった。立憲に光明はあるのかーー。

 ーー衆院選の結果をどう総括していますか?

 選挙前から、いろんな状況を聞いたり、数字を見たりして、もしかすると立憲民主党は大台(100議席)を割るんじゃないかと感じてはいた。菅前総理から岸田総理へと代わり、岸田くんが特別に良いわけでもないけれど、イメージは菅くんと対照的。日本人は新しいご祝儀が好きだから、岸田人気は別として、自民党が強くなるかもしれないと警戒していたら、その最悪の予想が当たってしまった。僕自身も厳しい結果になってしまったので人のこと言えないけれど、結果はなるべくしてなった感じだ。

 ーー立憲民主党は、14議席減の96議席でした。立憲の敗因は?

 枝野・福山の執行部が国民の暮らしや生活に関する思い切った政策を主張できず、国民に伝えきれなかったってことだ。共産党との共闘についてうんぬん言う人がいるけれど、それはプラスの面もマイナスの面もある。僕はそれが根本原因ではないと思う。やはり、立憲民主党の存在が国民の心に刺さらなかった。その象徴が投票率の低さだ。戦後最低から3番目とのこと。「立憲民主党に政権を」という感覚や認識が、国民にまったくないということだ。だから自民党には入れない人は、投票所に来ない。

 ーー立憲自体に問題があったと?

 勝ちに行くためには、国民の心に染み入るような政策の主張と同時に、戦う態勢についても、きっちり整えなければいけなかった。党内的には枝野・福山執行部だけでなく、全員が頑張れる態勢。党外では、玉木くん(国民民主党)とも、社民党とも、太郎くん(れいわ新選組)とも一緒にやれるような態勢を取らなければ、とても国民が「政権を」とはならない。共産党のことだけワーワー言って。「限定的な閣外からの協力」という文言もへんちくりんだった。曖昧な言葉を使っちゃダメなんだ。

■地元の60歳以下は僕の顔をほとんど見たことがない

 ーー小沢さんの小選挙区敗北は、まさかの驚きでした。

 自分の選挙区のことだけじゃないけれど、選挙期間中、僕はおかしい、おかしいと思ってた。何度も地元の人に、変わりないかと聞いたけど、みな「いやいや大丈夫です」って。とにかくうちの秘書も、勝てる選挙をずっとやってきているからね。僕自身も含めて、最初から、きちっと有権者の心をつかみきれなかったということだな。

 ーーご自身の敗因は何だったのでしょう?

 理由は明らかなんだ。60歳以下のほとんどの人は僕の顔を直接見たことがないって言うんだから。地元に帰ってこないからって。だから、そういう年齢的なことがまずあるのはもちろんだ。そこに、岩手1区の問題(編集部注=立憲岩手県連と岩手1区の階猛氏が政治資金を巡り裁判で争っている問題)が影響したろうと。そして、立憲民主党の全体的な弱さだ。その3つだな。今度はちゃんと選挙区に帰るよ。帰って締め直さなきゃだね。

大業を成すには、共産党も自分を殺さなきゃいかん

 ーー世間では、立憲と共産党との共闘が諸悪の根源のように言われています。支持団体の連合がその急先鋒です。

 共産党うんぬん以前に、昨年9月に立憲民主党と国民民主党が合流した際、玉木くんが最終的に分派行動をして、国民民主党の一部を残してしまったことが影響している。それには連合の責任も大きい。だけど今、組織として一番深刻なのは、連合と共産党だよ。もちろん政権への道ということを考えれば、我が党の問題ではあるんだけれど。連合はこのままだと、かつての総評と同盟にまた分裂してしまうんじゃないか。連合は、立憲民主党と国民民主党が、昔の社会党と民社党になってしまっても、それでいいと考えているのか。どうかしているよ。いずれ僕も連合と会って話したいと思っている。

 ーー共産党については?

 共産党も候補者を降ろす、降ろさないの判断が中途半端。みな最後は自分たちのことばかり主張する。大業を成すには、自分を殺さなきゃいかん。共産党も、自分たちも一翼を担って政権をつくるんだ、と本気で言うのなら、自分を殺さなきゃいかん。それなのに、各都道府県に1人は共産党の候補を立てるなんて、自分たちの都合を言ってたんじゃダメだ。与党を見てごらん。公明党は衆院選で9つの小選挙区にだけ候補者を擁立して、あとは全部、自民党を応援してる。それでちゃんと票を取っているじゃない。そこが公明党・創価学会の利口なところだよ。僕は共産党に言ったんだ。都道府県で1つと言わずいくつでもやるよ。共産党系の候補者が当選するなら全部応援する、と。だけど、当選できないじゃないか。当選できないところで無理やり候補を立てるのでは共闘にならない。そう言ったんだ。まあ、僕は誰に対してもだけどビシビシ言うもんだから、みんな来なくなっちゃうけどね。

 ーー共産党とはどういう協力をすべきだったと思いますか?

 でも問題は共産党じゃない。自分たち自身。選挙直前までグズグズ引っ張ったのがダメ。立憲民主党というのは、とにかく結論が出ないんだ。グズグズして、その間に国民は呆れ果てちゃう。どっちでもいいからバシッと結論を出せばいい。そうすれば批判もあるけど、支持もある。どっちつかずは誰も相手にしないよ。

■「提案型の政党」は言葉が上滑り

 ーー立憲が「批判ばかり」「反対ばかり」と言われていることには?

 メディアの言うことに、いちいちビクビクしてちゃダメなんだ。競争第一の自民党の政権と、「すべての国民のために」という我々の理念は絶対に相いれないんだから。是々非々だなんて言う連中がいるけど、良いことに賛成するのは当然で、あえて方針に出す必要なんてない。党の方針としては、我々の理念はこうだから、これに基づいて国会ではきちんと対応します、と言えばいいだけ。まずは何を基本の理念・哲学にして、何を提案するかが大事で、「提案型の政党になりましょう」なんて、言葉だけが上滑っている。

 ーー党の立て直しには、理念を改めて明確にする必要がありますね。新代表と執行部のリーダーシップが重要です。

 ちょっと気になるのは、泉代表が代表選挙で最初から「役員の半数を女性にする」と言ってしまったこと。優秀ならば女性も男性も関係ない。女性の方が多くたって構わないけれど、「女性だから」で数字合わせするのはおかしい。こうした人事が受けると思ったのか。世論調査の結果は現状、そうなっていない。

 ーー来夏の参院選が半年後に迫っています。

 このままじゃ勝てないだろう。惨敗しかねない。維新はきっと、いい気分でどんどん候補者を立ててくるよ。維新が1人区に全部立てれば、下手すると、立憲はどこも取れないかもしれない。「維新なら当選するかもしれない」と思う候補者もいっぱい出てくるだろう。一方、立憲民主党から出馬しようなんて思う人はいないんじゃないか。困ったもんだよ。

 ーー小選挙区で落選し、比例復活での18期目です。あらためての決意は?

「まだ仕事がある、隠居には早いよ」っていう天の声だろうと思って頑張ろうと気持ちを持ち直した。この任期中に、どうしても今度こそ政権交代だ。

 ーー何をやりますか?

 僕は皆のためになるなら、やれることは選挙を手伝うしかない。全国の選挙を取り仕切った経験のある人は、そういないからね。ましてや出馬したいという候補者のいないような政党の選挙を取り仕切って勝つのは容易なことじゃない。

 ーーただ、政権交代は、さらに遠のいてしまったように思いますが。

 確かにそうだ。でもまた一気に戻るよ。それが小選挙区制度。投票に行かなかった10%の有権者が、投票に行けばひっくり返る。10%の人に、投票所に行こうという気持ちを起こさせるには、野党がしっかりした姿を見せることに尽きる。

(聞き手=小塚かおる/日刊ゲンダイ)

小沢一郎(おざわ・いちろう)1942年、岩手県出身。慶大卒。日大院中退。69年衆院初当選。自治大臣、自民党幹事長、新進党党首、自由党党首、民主党代表などを歴任。現在18期目。

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