【大鰐温泉もやしの丸ごとおひたし】給料日「直後」のお楽しみ
もやしは給料日前のピンチを乗り切る“セーフティーネット食材”とは限らない。
津軽の伝統野菜「大鰐温泉もやし」は別格で、堂々たる見た目と力強い風味は「キング・オブ・もやし」と呼ぶにふさわしく、ディナーともなればメインディッシュ級の働きをしてくれるのだ。
となれば値段もやはりスペシャルで、東京・飯田橋にあるアンテナショップ「あおもり北彩館」で購入したものは、1束519円。むしろ、給料日後のプチぜいたくとして買う「もやしサマ」なのだ。
津軽の奥座敷といわれる大鰐町の特産品で、町役場のHPには、<350年以上前から栽培されてきた津軽伝統野菜の一つで、津軽三代藩主・信義公が大鰐で湯治する際は必ず献上したとされております>とある。
一般的なもやしは水耕栽培だが、こちらは温泉の熱を利用した土耕栽培。長さ40センチほどに成長すると収穫となり、温泉水で土を落とし、わらで束ねて出荷される。
実は大鰐温泉もやしを目当てに、現地まで食べに行ったことがある。東京から東北新幹線に乗り、新青森駅で在来線に乗り継ぎ、40分かけて大鰐温泉駅へ。販売店を数軒回るも「きょうは入荷がないのよ~」と言われ、年甲斐もなく心の中で大泣きした。ところが弘前市内の八百屋で偶然発見し、奇跡的にゲット。店の主人に勧められた食べ方は「おひたし」だった。
「根っこは絶対に捨てちゃだめ」と念押しされ、帰宅後すぐに作ってみると、シャコシャコとした食感と強いうま味が口の中にじゅわ~っと広がる。豆もやしともセリとも異なる滋味深さ。その味が忘れられず、入荷日の金曜になるとふらっと「あおもり北彩館」をのぞき、財布と相談しながら買うようになった。
もっとも給料日前は近所のスーパーでいつものもやしを購入し、ピンチを救ってもらうのだが、大鰐温泉もやしに出合ってからは、ひげ根を取るのはやめた。面倒くさいからではない。ひげ根にもビタミンCやミネラル、食物繊維が含まれているし、何より雑味にも愛着が湧くようになったのだ。それに……根っこも値段のうちである。
(日刊ゲンダイ編集部)
【材料】
・大鰐温泉もやし…1束
・だし汁…500cc
・薄口醤油…大さじ1.5
・塩…小さじ1
【作り方】
(1)だし汁、薄口醤油、塩を保存容器に合わせておく。
(2)鍋にたっぷりのお湯を沸かし、豆のついたほうを先に入れ、1分ほど加熱。しばらくしてから全体を入れ、さらに1分ほど茹でる(写真①)。
(3)水に取って冷まし、水気を切って、①の中に浸し、冷蔵庫で一晩、なじませる。
(4)食べやすいよう適当な長さに切り、器にだし汁とともに盛り付けて、出来上がり。