【三関せりと親鳥の鍋】主役は根っこ! これがなきゃ始まらない
案の定、店内は混み合っていた。各都道府県のアンテナショップが軒を連ねる東京・有楽町の交通会館。その日、中でも賑わっていたのが、県内の名産品が揃う「秋田ふるさと館」である。
レジへとつながる行列に並ぶ客のほとんどが、同じ葉物野菜を手にしている。秋田県湯沢市の伝統野菜「三関せり」。記者の目当てもそれだ。
「基本的に毎週火・水・金・土に入荷します。今年は2月いっぱいまで。ぜひ、お試し下さい」
とは、女性店員さん。
入荷日は特に混雑が増す。みな、このせりのおいしさを知っているのだ。
大きな葉、太い茎。それだけ香りが鮮烈だが、最大の特徴はなんといっても、長く白く伸びた根っこである。
「せりは根っこを食べるもの」
名言風に言う秋田出身の同僚記者の言葉を借りるまでもなく、茎と同じくらいの長さに伸びたこの根がおいしいのだ。
「きりたんぽ(鍋)だって、せりの根がなきゃ始まらない。それを知らない県外の人は、せっかくの根を切り落として捨てちゃったりするんだ。新婚当初、それで夫婦喧嘩をしたっけ」
根はシャキシャキで風味がより濃い。鍋に入れれば、ダシと香りをスープに放出してくれる。これがなきゃ始まらない、という同僚の話はもっともである。
本場のきりたんぽ鍋はこのせりに比内地鶏が必須だというが、全国的な知名度を得ているブランド地鶏は値が張る。そこで、自宅でよく使うのが「親鳥」のもも肉だ。採卵用に飼育された鶏がその役目を終えると「廃鶏」となり、その名の通り、大半は処分されるか、ミンチや加工肉に回される。しかし、特に四国以西では「親鳥」や「成鶏」と表記され、食肉用として重用されている。歯応えが強い、というより硬いものの、噛むほどに濃厚なうま味が口の中でほとばしる。ダシもよく出て、しかも一般的な「若鶏」より2割から3割ほど安価だ。記者は専門店やネット通販で買っている。
(日刊ゲンダイ編集部)
【材料】
・親鳥もも肉…300グラム
・根付きせり…2束
・まいたけ…1パック
・ゴボウ…2分の1本
・かつおだし…700㏄
【作り方】
(1)親鳥を細切りにし、せりの根をよく洗う。根に石や土が多く残っている場合は歯ブラシなどを使ってきれいに落とす。
(2)かつおだしに酒、塩、醤油を入れて好みの味に調えて煮立て、親鳥とまいたけ、ささがきにして水にさらしたゴボウを加える。
(3)最後にせりを加えていただく。せりは煮過ぎないのがポイント。