外国人が歌う日本語のど自慢大会で活路 苦慮したオファーへの返信メール
ウクライナの伝統楽器バンドゥーラ奏者のカテリーナさんは、来日後に日本人のサラリーマンと結婚し、その後出産。事務所には所属せずに自分自身でライブハウスなどに出演願のメールを送りつつ、子供を連れて演奏しに行くという地道な営業を続けていた。「子供が学校に通い始めた頃から『楽器を弾きながら歌ってる外国人』といった口コミがだんだんと広がっていった」という。
そんなある日、カテリーナさんは「のどじまんTHEワールド!」(日本テレビ系)という外国人が歌う日本語のど自慢大会を偶然、見ていた。
「ちょうどクリス・ハートさんが入賞した時のものでした」
クリス・ハートさんは元々アメリカ人で2017年に日本人に帰化したJ-POPの歌手だ。
「私も日本の歌を歌っているのでチャンスかもしれないと番組出演に応募してみました。その返事がなかなか来なくて諦めかけていた頃にやっと連絡があり、数カ月後に出演が決まったんです」
そして12年夏に番組に出演しカテリーナさんは決勝戦まで勝ち進んだ。
「残念ながら結果は3位でしたけど、すごく楽しかった」といい、その後につながった。この番組で歌ったのはMISIAの「逢いたくていま」と一青窈「ハナミズキ」で、「ハナミズキ」はYouTubeで見ることができる。それを見た関係者からコンサートの依頼が来るようになったという。
「インターネットで演奏を見ました。ぜひ、コンサートをお願いしたいですというメールを初めていただいた時はうれしかったですね」
ところが、早速メールの返事をしようとしてもビジネス用の日本語を書くことができない。
「私の日本語で書いて変な言い方になってしまうのは失礼だから、旦那さんに手伝ってくださいと返信の文面のお願いをしました。ところが、彼は『後でね』って言ったきりなかなか書いてくれない。早く返事をしてと、もう一度頼んだら、『なんで自分で返事を書かないの? あなたの仕事でしょう。自分でやらないとダメでしょう』って言われてしまった。基礎となる文章だけ書いてくださいって頼んでも書いてくれないので、私がブチ切れてしまって……」
この時、ご主人がカテリーナさんに手を差し伸べなかったことは確かに厳しいが、後にカテリーナさんは感謝することになる……。
カテリーナさん主宰のイベント「ウクライナ料理と音楽の夕べ」で披露する手作りおもてなし料理。今回は「黒パンのカナッペ」。黒パンのずっしりした食感に、さっぱりしたチーズと青ネギの風味が白ワインと合う。