トリチウムの除染に成功したものの…共同研究者が明かした懸念と新たなアイデア

公開日: 更新日:

 この先、数十年も海に放出され続ける福島第1原発のALPS処理水。中に含まれる放射性物質トリチウムを「分離・回収する装置の開発に成功」と近畿大学の研究チームが発表したのは、2018年6月のことだ。

 トリチウムを含んだ水と通常の水は化学的な性質が全く同じで、分離は難しい。だが、研究チームは温度60度ほどだと、何かの表面に接した際、両者の離れ方に差異が生じる特性に着目。超微細な穴を多数持つ「多孔質体」のアルミ加工フィルターに両者を通すと、トリチウム水だけが残り、通常の水と分離できた。

 つまり、トリチウムの除染に成功したのだ。その成果を各メディアは驚きと期待を込めて報じたが、共同研究者のひとりで現在、近大原子力研究所長の山西弘城氏は懸念を抱いていた。

「処理できる水の量が少なかったからです」

 山西氏は淡々と理由を明かし、こう続けた。

「トリチウム水と通常の水を混ぜ、蒸気にしてフィルターに通すのですが、それほど多くの量は処理できません。10時間の連続実験で1時間ごとに通した水は3.5グラム。ごく少量です。結果も初期段階はほぼ100%分離できましたが、扱う量が増えるにつれて効率は極端に落ちてしまった」

■関連キーワード

最新のライフ記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    安青錦は大関昇進も“課題”クリアできず…「手で受けるだけ」の立ち合いに厳しい指摘

  2. 2

    阿部巨人に大激震! 24歳の次世代正捕手候補がトレード直訴の波紋「若い時間がムダになっちゃう」と吐露

  3. 3

    マエケン楽天入り最有力…“本命”だった巨人はフラれて万々歳? OB投手も「獲得失敗がプラスになる」

  4. 4

    中日FA柳に続きマエケンにも逃げられ…苦境の巨人にまさかの菅野智之“出戻り復帰”が浮上

  5. 5

    今田美桜に襲い掛かった「3億円トラブル」報道で“CM女王”消滅…女優業へのダメージも避けられず

  1. 6

    高市政権の“軍拡シナリオ”に綻び…トランプ大統領との電話会談で露呈した「米国の本音」

  2. 7

    エジプト考古学者・吉村作治さんは5年間の車椅子生活を経て…80歳の現在も情熱を失わず

  3. 8

    日中対立激化招いた高市外交に漂う“食傷ムード”…海外の有力メディアから懸念や皮肉が続々と

  4. 9

    安青錦の大関昇進めぐり「賛成」「反対」真っ二つ…苦手の横綱・大の里に善戦したと思いきや

  5. 10

    石破前首相も参戦で「おこめ券」批判拡大…届くのは春以降、米価下落ならありがたみゼロ