著者のコラム一覧
和田秀樹精神科医

1960年6月、大阪府出身。85年に東京大学医学部を卒業。精神科医。東大病院精神神経科助手、米カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在、和田秀樹こころと体のクリニック院長。著書多数。「80歳の壁」(幻冬舎、税込み990円)は現在、50万部のベストセラーに。最新刊「70歳の正解」(同)も好評発売中。

「尊厳死」を巡る厚労省の思惑とリビング・ウィル(生前の意思)の必要性を考える

公開日: 更新日:

 私が老人医療に携わるようになった1980年代は、尊厳死のような考え方があり、苦しそうな高齢者に「人工呼吸器をつけますか?」と家族に確認すると、「十分頑張ったのでこれ以上は無理をさせたくありません」といったことを返されることがありました。そういったやりとりで、医療者側は医療を手控えることになるわけです。

 その尊厳死の流れに乗ったのが当時の厚生省(現・厚労省)でした。尊厳死が議論される前はなるべく延命する方向でしたが、少子高齢化の急速な進展もあって医療費が膨張。国の財政が苦しくなってきたからといって、「医療費が高いので延命治療をやめましょう」とはいえません。そこで、話のすり替えで尊厳死の考え方を支持したのです。

 さらに厚労省は“最期は病院から自宅へ”という「在宅死」という言葉まで持ち出しました。世論をそちらに誘導した背景があるのです。

 そんな中、コロナ禍が襲い、そんな流れを吹っ飛ばしてしまいました。コロナ病棟では、家族の意思も確認せず、ECMO(エクモ、人工心肺装置)や人工呼吸器につながれる患者が相次ぎました。コロナ禍によって、望まない延命治療で尊厳死が無視されていることも、一部ではあるのです。

最新のライフ記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    俳優・山口馬木也さん「藤田まことさんは『飲め、飲め』と息子のようにかわいがってくれた」

  2. 2

    前代未聞の壮絶不倫・当事者のひとりがまたも“謎の欠場”…関係者が語った「心配な変化」とは???

  3. 3

    テレ朝ナスD“経費横領&パワハラ処分”に「見せしめ」の声も…家族団らん投稿の美人料理家妻に同情集まる

  4. 4

    自信なくされたら困るから? 巨人・田中将大がカブス戦登板「緊急回避」の裏側

  5. 5

    東原亜希の“黒帯バスローブ密会”乗り越えた「許す力」は佐々木希以上? 経済的自立も目指す強心臓とたくましさ

  1. 6

    料理研究家の森崎友紀 “本業”専念も恋愛は「年も年なので」

  2. 7

    兵庫県パワハラ知事に残った選択肢は「議会解散」のみ…多数派工作で延命図るか?味方は“情報漏洩3人組”のみ

  3. 8

    あす旧統一教会に解散命令か? N国党に急接近の不気味、タダでは転ばない悪あがき

  4. 9

    巨人の“アキレス腱”は絶対的セットアッパーが使えないこと…新助っ人キャベッジで外国人枠「満員」

  5. 10

    佐々木希が「芸能人格付けチェック」で"地雷キャラ"といじられ…夫・渡部建を捨てないもう1つの理由