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内田正治タクシードライバー

1951年埼玉県生まれ。大学卒業後、家業の日用品、雑貨の卸会社の専務に。しかし、50歳のときに会社は倒産。妻とも離婚。両親を養うためにタクシードライバーに。1日300キロ走行の日々がはじまった。「タクシードライバーぐるぐる日記」(三五館シンシャ)がベストセラーに。

(16)他人様のお金を黙って懐に入れたら…「1万円札」をめぐる2つの思い出

公開日: 更新日:

 古典落語で有名な「時そば」は、そば代を支払うときに何度も「いま、何時だい?」と尋ねて、そば屋の注意をそらしなんとかそば代をごまかそうとする客の話。幸いなことに私はそんな客に遭遇したことはない。

 もっともいまは、ほとんどのお客が電子マネーやクレジットカードで支払うから、「時そば」を企てようにも不可能だろう。

 だが、私がこの仕事をはじめたころは、現金払いが主流だったから、支払いの際には結構、神経をつかった。なんといっても料金メーターの記録通りに会社にお金を納めるのがルールだから、間違ってお釣りを多く渡してしまえば、そのマイナス分は自分が負担することになる。10円、20円の誤差なら笑ってすませられるが、1000円、2000円ともなるとそうはいかない。1000円、2000円の料金で1万円札を出された場合など、素早く何枚もの1000円札を数えてお釣りを渡さなければならない。クシャクシャになった札なら間違えることはまずないが、新札が重なっているときなどは要注意だ。

 高齢者なら誰でも実感することだが、年を取ると指先も脂分が抜けて乾いているから新札を数えるのに苦労する。だからといって、指先をナメナメしていたら不衛生だし、なによりお客が不快な思いをする。そのせいで、大した額ではないが、これまでも何回かお釣りの間違いで損をしてしまったこともある。

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