住吉「山城屋酒場」は若い女性が一人で本を読みながらホッピーを飲める老舗酒場

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酔っ払いはお断り

 仕事を終えて暖簾をくぐったのは午後9時近かった。引き戸を開けると白木の大きなL字カウンターが目に入る。カウンターの8割ほどの客は、すでに上機嫌。するといきなり女将らしき女性が「1軒目ですか? 酔っている方はご遠慮願いますよ」。なかなか手キビシイ。ちょっとひるんだが、態勢を立て直し、「1軒目。のど、カラカラ。飲ませてくれる? 初めてだけど」。すると「こちらへどうぞ」。L字の端のいい席に案内してくれた。

 カウンター内の別の女性が笑顔で「のどカラカラじゃ、ビール?」。「一番搾りの大瓶を(650円)」。下町女は筋を通せば優しいのだ。ビールで人心地つき、壁の品書きを見るとこれぞ酒場の肴というものばかり。子供が欲しがるのは鳥の唐揚げぐらいだろう。早速、煮込み(450円=写真)と焼きはんぺん(450円)でスタート。煮込みはテッポーと呼ばれる分厚いモツが、ちょうどいい歯ごたえに煮込まれている。

 これは絶品。はんぺんはアタシの大好物。その昔、家族で流れるプールで有名な大磯ロングビーチに行く途中、親父が必ず、はんぺんを買ってつまみにしていた。一口かじったその味が忘れられず、あれから半世紀以上経ったいまも、はんぺんがあれば必ず頼んでしまう。のどが潤ったところで腰を据えて飲むことにしよう。

 カンパチの刺し身(600円)がまだ残っているぞ。そいつで上撰菊正の常温(550円)といこう。アタシが座っているカウンターの向こうに4人掛けのテーブル席が4つほど。その上に神棚がある。軽く会釈し、菊正を口に含む。ピリッと辛めで刺し身にピッタリだ。

 1897年に酒屋として創業してから100年以上。だが、清潔で明るく、居心地のいい店内はそんな歴史の重さを感じさせない。アタシの隣では若い女性が一人で本を読みながらホッピーを飲んでいる。若いサラリーマンたちや、地元の先輩たちも心地よさそうにしているのも、そんな雰囲気によるものだろう。そろそろ閉店の10時。女将がせわしなく片付けを始めている。怒られる前に引き揚げるか。

(藤井優)

○山城屋酒場 江東区住吉2-7-14

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