暗記が苦手な人ほど司法試験に早く合格しやすいワケ…カリスマ塾長の伊藤真氏が明かすその秘訣
膨大な量の前でやるべきは、アウトプットを意識した記憶
記憶力はあくまでも、目的やゴールに対しての手段です。多くの塾生を見ていて感じるのですが、苦手なものとはじつは強みだということです。記憶力に自信がなくても、まったくひるむことはありません。
記憶力が悪いのは、マイナスではなく、むしろプラスです。苦手だと思うから、覚えるために努力をします。それが積もり積もっていくと、どうなるか。毎日、記憶を反復して、整理し、ゴールに関連づけて考えていれば、1年365日、その小さな差が積もり積もっていきます。
何年後かには「大きな差」になって表れるのは明らかです。
すべてのものを覚えることは、不可能です。本当に大事なものとそうでないものを、分別しなければなりません。私がそれに最初に気づいたのは、司法試験の勉強をスタートさせた大学3年生のときでした。まず考えたのは、「この膨大な量を、どのように確実に記憶していけばよいのか」ということでした。
当時の司法試験は、7科目ありました。法律科目6科目と教養選択科目1科目です。
法律科目は1科目につき、何種類かのテキストに問題集、判例集もあるので、それらの本を積んでいくと、科目によっては1メートルを超えるものもありました(ちなみに現在は、法律基本7科目と選択科目1科目の計8科目です)。
となると、たくさんの量の中で、本当に記憶しなければいけないものを絞り込む必要があります。
そこで、アウトプットを意識して確実な記憶だけを定着させていけばよいと考えました。どこで使う知識だから、どのように記憶しなければいけないかを意識して、必要な情報を選別し、それを確実に覚えていくようにしました。
目的に合わせた記憶ができるかどうか。それを使って考え、応用できるか。それが、合否の分かれ目になると考えたのです。
▽伊藤 真(いとう まこと)
1958年、東京生まれ。伊藤塾塾長。81年、東京大学在学中に司法試験合格。その後、受験指導を始めたところ、たちまち人気講師となり、95年、「伊藤真の司法試験塾(現、伊藤塾)」を開設する。「伊藤メソッド」と呼ばれる革新的な勉強法を導入し、司法試験短期合格者の輩出数全国トップクラスの実績を不動のものとする。「合格後を考える」という独自の指導理念が評判を呼び、「カリスマ塾長」としてその名を知られている。現在、弁護士として、「1人1票」の実現のために奮闘中。『考える練習』『夢をかなえる勉強法』(サンマーク出版)、『伊藤真試験対策講座(全15巻)』(弘文堂)、『伊藤真の法律入門シリーズ(全8巻)』(日本評論社)、『中高生のための憲法教室』(岩波書店)、『憲法の力』(集英社)、『続ける力』(幻冬舎)など著書多数。