著者のコラム一覧
大竹聡ライター

1963年、東京都生まれ。早稲田大学第二文学部卒業後、出版社、広告代理店、編集プロダクションなどを経てフリーに。2002年には仲間と共にミニコミ誌「酒とつまみ」を創刊した。主な著書に「酒呑まれ」「ずぶ六の四季」「レモンサワー」「五〇年酒場へ行こう」「最高の日本酒」「多摩川飲み下り」「酒場とコロナ」など。酒、酒場にまつわるエッセイ、レポート、小説などを執筆。月刊誌「あまから手帖」にて関西のバーについてのエッセイ「クロージング・タイム」を、マネーポストWEBにて「大竹聡の昼酒御免!」を連載中。最新刊は「酒好きの記」(集英社新書)

(39)長崎のおでん屋の絶品雑炊

公開日: 更新日:

 締めには、出汁で炊く雑炊がある。裏の厨房にいったん引き上げたご主人は、しばらくすると熱々の雑炊の入った土鍋を持って戻ってくる。

 おでん出汁を調整して茶漬けにする締めの一品は神田の行きつけでよく頼むのだけれど、長崎の名店は茶漬けでなく、雑炊にしてくれた。上品な味わいと、絶妙なコクがあり、茶碗に2、3杯食べられそうなほどで、満ちかけた腹に無理なく収まった。酒を飲むとあまりものを食べない私が、店を出るときは大きく息を吐き、腹をさすっているのだった。

 思案橋界隈は、居酒屋、割烹、和食、洋食、中華にバーやスナック、なんでもある。狭い路地にずらりと並んでいて、ちょっとした迷宮である。満腹した私はその日、スナックの客になった。知らない土地でスナックに入ることなど滅多にないが、うまいおでんで気持ちが浮き立っていた。

 ああ、あのおでん屋さん、行きたいなぁ。酷暑の夏に、涼しい中央線の車中でおでんを想う。暑さで頭がおかしくなったか。

 やがて中央線は吉祥寺駅のホームに滑り込んだ。

【連載】大竹聡 大酒の一滴

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