【鹿児島・嘉之助蒸溜所】日本一美しい蒸留所のバーで水平線を眺めながら至極の一杯
土地や環境に合わせた原酒を製造
日本の蒸留所は山崎、白州、余市といった地名が多いが、嘉之助蒸溜所は創業者小正芳嗣の祖父・小正嘉之助の名前に由来する。第2次世界大戦後、日本に戻った嘉之助は地元で米焼酎造りに専念したものの、当時の焼酎は「労働者向けの安価で粗悪な酒」とされ、いくら造っても儲けにならない。そこでウイスキーやブランデーのように樽に入れて熟成させれば、付加価値がつくのではないかと考えた。その発想から誕生したのが、日本初の樽熟成の米焼酎「メローコヅル」だった。嘉之助の焼酎造りの原点は「樽」にあった。
「国内の蒸留所は熟成にバーボン樽を使うところが多いのですが、うちは5割程度です。その次が長年、メローコヅルの熟成に使ってきた焼酎樽です。焼酎は43度で樽詰めしますが、ウイスキーは60度です。高度数で樽詰めすると、樽に残っていた成分が出てきて同じアメリカ産のホワイトオークで作ったバーボン樽とはまったく違う味わいになります」(中村さん)
バーボン樽で熟成した原酒は、バニラや焦がした樽の感じの一般的なウイスキーにイメージされるフレーバーになるが、焼酎樽熟成は和の香味がにじみ出てくるという。
■世界に類を見ない米焼酎樽で熟成
「桃とか花梨、あんず、ニッキといったバーボン樽にはない、ちょっと甘酸っぱいフレーバーです。麹を使った焼酎は他のスピリッツにはない嘉之助独特の個性があります。それが長年かけて樽に染み込み、一緒に抽出されます。他の樽では出てこない味わいが焼酎樽にはあります。焼酎の樽でウイスキーを造っている酒蔵はごく一部で、空き樽がたくさんあるのがうちの財産です」(中村さん)
嘉之助の強みは焼酎造りで培ったノウハウがあること。スコットランドと日本のモノ作りの技術を合わせ、独自の醸造法を織り交ぜ、100年先、次の世代を見据え、この地に根ざしたウイスキー造りに励んでいる。
「ウイスキーも焼酎や日本酒同様、地酒です。それぞれの蒸留所がその土地や環境に合わせて工夫しながら、自分たちの味を作り出しています。我々も試行錯誤を繰り返しながら、リッチでスイートでフルーティーなウイスキーを造りたい。今、ようやく4、5年の原酒を持てるようになりましたが、やはりウイスキーのロマンは10~12年です。来年12月には、最初に詰めたウイスキーがいよいよ10年目を迎えます。恵まれた環境で熟成は進みますが、10年を超えてさらにおいしくなるウイスキー造りを目指しています」(中村さん)
世界5大ウイスキーのひとつとなったジャパニーズウイスキーに対する期待はますます高くなっている。
THE MELLOW BAR
ウイスキー蒸留所が建つ土地は、かつて焼酎造りを手掛けた小正嘉之助が、「多くの人が集まり、モノ作りを体験し、美しい景色を眺めながら酒を楽しめる『焼酎のテーマパーク』にしたい」と構想していたところ。その志を受け継いだ小正芳嗣は訪れる人々を歓迎する思いを込めて、蒸留所の隣に「コの字」型のビジターセンターを建設した。2階には見学ツアー参加者が利用できる「THE MELLOW BAR」が併設されている。
「嘉之助もこの場所でサンセットを見るのが大好きだったそうです。バーカウンターには長さ11メートルの一枚板を使い、椅子は、ちょうど腰かけた時に目線が水平線の位置になるように作っています」(中村さん)
これだけの絶景を眺めながら、ウイスキーをたしなめるバーカウンターを備えた蒸留所は国内の他の蒸留所にはない。「日本一美しい蒸留所」といわれるゆえんだ。
嘉之助のボトルのデザインは、東シナ海に沈む夕日と水平線をモチーフにしている。
見学ツアー
見学ツアーはすべて発酵、蒸留の製造工程、熟成庫を順番に見て回れるようになっている。
モルトウイスキー用の蒸留器「3基のポットスチル」(写真)は、異なるネックの形状やラインアームの角度により、多彩な香りや味わいの原酒を生むことができる。糖化槽や発酵槽、使い込まれた発酵樽が高く積まれ、施設内には麦芽の甘く芳醇な香りが漂い、現地に足を運ばなければ得られない貴重な時間を体感できる。
ツアー後は2階の「THE MELLOW BAR」でウイスキーをテイスティング。自身の好みでウイスキーをブレンドできるツアーも用意されている。見学は事前予約制で木、金、土日祝に開催している。
【嘉之助蒸溜所】
鹿児島県日置市日吉町神之川845-3
℡099-201-7700
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