古書ほうろう(台東区・池之端)人文オールジャンル。掘り出し物に出合えそうなワクワク感に満ちている
東大の池之端門の真正面。赤い日よけテントが目印だ。谷川俊太郎、画集、あるいは「中国の旅」……。賑やかな店頭で、立ち止まる人がめっぽう多い。皆さんおそらく常連。本が紐で束ねられて通路を占拠しているのを驚きもせず、奥へとお進みになる。
「通路に何も置かないのが理想ですが、どうにもならなくて」と店主の宮地健太郎さん、苦笑。
棚も平台もぎゅうぎゅう。人文オールジャンル。掘り出し物に出合えそうなワクワク感に満ちている。かつて千駄木で33坪の店舗を21年間営業。家賃更新時に「10万円アップ」を提示され、2019年にここへ移転してきた。「以前の3分の2くらいの広さに、中身を“ぎゅっとした”感じ」
ふむふむ。「おおきなかぶ」で知られる翻訳家、内田莉莎子の絵本常設コーナーに、子息でミュージシャンでもある吉上恭太の翻訳本「ひとりぼっちのかいぶつといしのうさぎ」も。「恭太さんにはウチで何度もライブをしてもらいました」。平台に「シロくんとパレスチナの猫」「世界が眠っているあいだに」など先鋭的な新刊本がかたまっていて、「世の中の状況があからさまになっているので、必死です」。
宮地さんが何やら茶色い紙を手に、「買い取りに交じっていました」と見せてくれる。わっ。1975年の日刊ゲンダイ創刊号だ。1面の大見出し「共産党、中国と和解へ」。松本清張も遠藤周作も柴田錬三郎も寄稿。五木寛之「流されゆく日々①」も載っていて、目がクギ付けになるじゃない。「買っていいですか?」と思わず。
店の最奥にはレコード、3席の「窓辺喫茶」も
さらに心躍ったのは、「ご遺族から譲り受けた」という編集者、版画家の山高登の蔵書が並んでいた棚。橋本多佳子、上村占魚、内田百閒らの句集も多いなー。「山高さんの中を通ってきたものが、装丁・版画のお仕事に生かされているというのが分かります」と宮地さん。
ことほどさように、キャリア四半世紀超えだからこその品揃え。あと、店の最奥に歌謡曲からジャズ、クラシックまでレコードがぎっしりだったことも特筆したい。それにそれに、「窓辺喫茶」なる3席のこと。妻の美華子さんが自ら焙煎したコーヒーをドリップして入れる。香り高いコーヒーと本と。両方を楽しめる特等席がすてきすぎた。って、今回ちょっと褒めすぎですかね?
◆台東区池之端2-1-45-104/東京メトロ千代田線根津駅・湯島駅から徒歩6分、JR上野駅から徒歩12分/℡03-3824-3388/正午~午後8時、月・火曜休み(窓辺喫茶は水曜も休み)
※10月17.18日は不忍池南側でのイベント「池のほとりの本のみち」出展のため休み。
ウチの推し本
「メルヘンハウス 日本で最初の子どもの本専門店」三輪哲著、三輪丈太郎企画
名古屋の「メルヘンハウス」初代店主が残した言葉と寄稿で構成。
「小学生のとき通っていた縁で僕も寄稿しました。子どもたちと丁寧に会話を重ねた上で一人一人に合いそうな本を薦め、次に行くと『あの本、どうだった?』と尋ね、また別の本を出してくださる方でした。児童文学の新作も常に含まれ、大きな影響を受けました。実店舗の意義が詰まった本屋だったと、今思います」
(工学図書刊 2420円)
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