気鋭の哲学者に聞く グローバリズムと国家の相克<下>
立命館大学大学院 千葉雅也准教授 インタビュー
――グローバル化と国家による統制という話を具体的にお聞きしたいのですが。
千葉 近年、喫煙を規制、排除する動きが強化されていますが、これこそ象徴的なものです。一連の規制強化は表向きは健康を守るためとされ、医療費増大とも結び付けられています。しかし、根本には別のロジックがあります。ひとつは過酷なグローバル競争を生き残るには、無駄なく効率的なライフスタイルが要求されるので、嫌煙家らにとって“無駄で害のある”たばこ、喫煙は真っ先に切り捨ての対象となる。もうひとつは国家による統制。国家は国民を忠実な納税者にしておきたい。そのために国民の身体を管理して型にはめたい。それが公衆衛生に名を借りた喫煙規制、禁煙という形の統制になってきているのです。
――グローバル競争を生き残るための術、という考え方はビジネスマンとしては当たり前ということですか。就業時間内の禁煙もそうした考え方に基づくものですね。
千葉 ネオリベラリズムは世界を巻き込んだ熾烈な競争社会です。その舞台で戦うビジネス戦士は自己利益を最大化することが目標となる。他人の喫煙による受動喫煙で「身体という私有財産」を少しでも奪われるのは我慢ならないという考えです。