心臓が止まりかける度に蘇生…米テネシー州の死刑執行に「拷問だ」と倫理的議論が噴出
8月5日、米テネシー州ナッシュビルの刑務所で、バイロン・ブラック死刑囚(69=写真)が致死薬注射による死刑を執行されたが、その方法をめぐって倫理的な議論が噴出している。
ブラック死刑囚は心不全などのため、埋め込み型の除細動器(ICD)を胸部に装着していた。心拍リズムが不整になった際に心臓に電気ショックを与えて正常化する医療デバイスで、ペースメーカーと緊急除細動器の機能を兼ね備えている。
ブラック死刑囚の弁護団は、死刑執行の際に注入される致死薬ペントバルビタールが心臓を停止させる過程で、ICDが心臓を蘇生させようと繰り返しショックを与える可能性があると指摘。その結果、ブラック死刑囚が極端な苦痛を味わう「拷問のような死」に直面する危険があると主張し、執行直前にICDをオフにするように求めていた。
この申し入れを受け、ナッシュビル地裁は7月中旬、執行前にICDの機能を停止するよう命じたが、テネシー州最高裁は7月31日、この命令を覆し、「地裁には執行手順を変更する権限がない」と判断。死刑はICDが作動したままの状態で執行され、ブラックは午前10時43分に死亡が確認された。