家業の廃棄物処理会社を飛躍的に伸ばした社長の原動力<後>

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トライシクル 福田隆社長(後編)

 明治時代から続く資源リサイクル会社の4代目に生まれ、サラリーマンを経験した後、28歳で入社。ところが半年で父が急逝。見習い期間もないまま、社長業を継ぐことになった。

「20代と若かったので、何とかなるだろうと根拠のない自信がありました。今思うと恐ろしいですね」

 会社の重鎮からしてみれば、まだまだ“ひよっこ”。いかに楽観的だったとはいえ、「ちゃんと仕事をとってくる力があるところを見せつけないと」と危機感を持ったという。そこで父が亡くなる直前までやっていたスクーターバイクでの飛び込み営業を、社長になっても継続した。

「飛び込み先の人も驚いていましたよ。名刺に〈代表取締役社長〉って書いてあるんですから。え、社長さんですか? と何度も言われました(笑い)」

 もちろんやみくもに飛び込んだわけではない。町工場が減っている中、リサイクル用の金属を追うのは非効率。そこで会社の周りにたくさんあった物流倉庫の廃棄物を狙った。パレットなど物流資材の他、売れ残り商品も最終的には廃棄物になるからだ。そこに見積書などを持って出向いた。

「そんな律義な営業をする業者は当時いなかったですからね。相当珍しいやり方をしていたと思います」

 同じく取り掛かったのが会社の体質改善だ。以前は、取引相手が来ても無視して放置しているようなところがあったが、社員に顧客第一主義を口が酸っぱくなるほど訴え続けた。すると1年ほどで工場長などが顧客サービスを言い出すなど、確実に社内の空気が変わり始めた。そうした努力が実を結び、顧客が倍々で増加。取扱量は就任当時約800トンが3年後には4000トン、売上高も10億円が43億円と急増した。見事に社長の重圧を結果ではね返したのだ。

 一息ついて次に取り組んだのが、大規模処理工場の建設だ。それまで処理の難しい廃棄物は外部の工場に委託していたが、自社で高度な処理施設を持たなければ「これから先はない」と考えたからだ。そこで2007年に、千葉県富津市に敷地面積1万2600坪の大型リサイクル工場を設立。いわく「それまで三軍だったのが、いきなり一軍の下位に躍り出た」くらいのインパクトを業界に与えた。

メルカリの成功も刺激に

 その10年後、この設備投資が正解だったと裏付ける事件が起こる。世界の廃棄プラスチックを一手に引き受けていた中国が、2017年12月末に一切の輸入を禁止したのだ。

「それまでは分別処理する前に中国が買っていってしまっていたので、途方に暮れた業者は多かったでしょうね。うちは以前から中国に売れなかった分は自社工場で処理していましたからダメージは少なかったですけど、こんな大量のゴミをよその国に押し付けていたという事実にショックを受けましたね」

 これを機に、「サーキュラー・エコノミー」を意識し始める。ゴミを処分するのではなく、ゴミを出さないようにして資源を循環させる経済のことだ。そしてあるビジネスモデルの成功も刺激になった。

「メルカリです。家庭内の不要なものを、商品として完全に循環させている。我々から見たら完全なリサイクル業です。本当は僕らがやるべきことでした」

コロナ前に比べ取扱量は5割増し

 そこで、2018年5月にトライシクルという新会社を設立。世界初のサーキュラー・エコノミー対応プラットフォームアプリ「ReSACO(リサコ)」を、2019年2月にリリースした。このアプリは簡単に言うと企業版のメルカリ。企業から出た不用品を、フリマ、ネットオークションなどの方法で販売することができ、売れ残ったものは同社が引き取ってリメーク家具などにして販売。それでも残ったものは廃棄物として処分する。

「まずは企業からの不用品を集めているところ。コロナ禍の前に比べて、取扱量は5割増しになっています」

 不用品の収集から販売、リメーク、そして最終的な廃棄処分まで一気通貫でできるのが同社の強み。家庭向けフリマアプリ最大手、メルカリの国内流通総額は4454億円だが、果たしてそれに続くことができるのか?今後に注目である。 =おわり

(聞き手=いからしひろき)

▽ふくだ・たかし 1974年、東京生まれ。成城大学卒業後、ベアリング大手に入社。2001年に外資系コンピューター企業に転職。翌02年に父が経営する資源リサイクル会社「東港金属」に入社する。しかし半年で父が急逝したため、4代目社長に就任。企業改革に取り組み、年間売上高10億円を3年後には43億円に押し上げた。同時に積極的な設備投資も進め、07年、千葉に敷地面積1万2600坪の大型リサイクル工場を建設。18年にはグループ会社のトライシクルを設立。企業間で不用品をやりとりできるアプリ「ReSACO(リサコ)」を19年2月に運用開始した。

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