Yahoo!天気情報 生みの親は元野球少年 転機は腰痛<前編>

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ALiNKインターネット 代表取締役CEO池田洋人さん(前編)

 天気予報専門メディア「tenki.jp」を日本気象協会と共同で運営。前職ヤフー時代には「Yahoo!天気情報(現在はYahoo!天気・災害)」の全面的なリニューアルに携わり、今では当たり前の、地図上に天気情報を表示する仕組みや雨雲レーダーなどを導入、現在の気象予報サイトの礎を築いた。その後運営に携わった「tenki.jp」は年間約48億PVを誇る人気気象サイトに成長。自ら育てた業界トップの「Yahoo!天気・災害」に迫る勢いだ。

 少年時代は天気予報とは無縁の野球小僧。プロ野球選手(特に西武ライオンズ)に憧れ、高校時代は強豪・県立熊谷商業で甲子園を目指すも、猛練習がたたり2年生の時に椎間板ヘルニアを発症。手術もしたが、結局ドクターストップがかかった。

「2~3年はスポーツ禁止。ここできっぱり野球の道は諦めました。その後、体に負担のないソフトウエア部に入ったのですが、今思えばそれが運命の分かれ道でしたね」

 コンピューターの資格をとるのが目的の文化系の部活。つい最近まで泥だらけで白球を追っていた野球少年には別世界だったが、すぐにのめり込んだ。最終的には部長になるなど、コンピューターに精通。卒業後はエンジニアを目指し、実家から近い東京国際大学商学部に入学。新卒で民間の気象会社に入社した。

「ちょうどその頃“天気の自由化”が起こり、それまで気象庁の専売特許だった一般向けの気象予報が民間でもできるようになりました。特に天気が好きなわけではありませんでしたが、そうした形の見えないものがインターネットと結びついてビジネスになる可能性に引かれました」

気象予報士合格後、2年間寝たきり生活

 入社早々に挑んだのが気象予報士の試験。合格率5%の狭き門で、仕事が終わって家に帰ると毎晩2~3時間の受験勉強。

「初めての一人暮らしでしたが、テレビは買いませんでした。あると見てしまうから。合格するまで絶対買うもんかと(笑い)」

 そんな生活を2年半ほど送り、5回目の試験でついに合格するも、やはり無理がたたり腰痛を再発。それから2年間、文字通り寝たきりの生活を送った。

「最初の1年はとにかく痛くて、病院のベッドでつらさに耐えるだけでした。やがて自分でトイレに行けるくらいに回復すると、少し頭も回るようになり、リハビリも兼ねて気象予報士を応援するウェブサイトを独学で立ち上げました。当時、気象予報士は資格をとっても気象の仕事がほとんどない状況。それを何とかしたいという思いもありました」

 2年の闘病生活に耐えて社会復帰した池田さん。前職とは別の民間会社に就職した。

 その会社では、当時日本では珍しかった「生気象」を応用し、低気圧が近づくと古傷が痛んだり喘息の発作が起こったりという情報を、手塚治虫の人気キャラのブラック・ジャックが教えるiモードサイトを立ち上げたりした。

 その頃、当時飛ぶ鳥を落とす勢いで成長していたヤフーと仕事で関わるようになる。すでに気象サイトの「Yahoo!天気情報」はあったが、その目には「天下のヤフーにしてはあまりにチープ」な内容に映った。それを変えたいと思うと、思わぬ行動に出る。所属していた会社を辞め、何の確約もないままヤフーの門を叩いたのだ。 =つづく

(聞き手=いからしひろき)

■いけだ・ひろと 1974年、埼玉県生まれ。民間気象会社で生気象学を組み合わせたアプリやモバイルサイトの企画立案を行う。2003年、ヤフーに入社。「Yahoo!天気情報(当時)」のフルリニューアルを行う。05年に独立。08年から日本気象協会と共同で「tenki.jp」の事業運営に携わる。13年、ALiNKインターネットを設立。著書に「ずっと受けたかった お天気の授業」「たのしく学ぼうお天気の学校 12ヶ月」(いずれも東京堂出版)。

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