安田商店ジュン 藤井潤子さん<3>一度逃げた客は戻ってこず

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 コロナの新規感染者が連日1000人を超えていた大阪では、商売を諦め、閉店する店舗が後を絶たない。飲食店をはじめ、大阪の台所と呼ばれている黒門市場でも。

 石切劔箭神社の参道で70年もの長きにわたり、縁起物を販売する安田商店ジュンの店主、藤井潤子さんはこうつぶやく。

■「一度逃げたお客さんは戻ってきません」

「安くて新鮮がウリだった黒門市場だったのに、最近は中国や韓国からのお客さんが押し寄せたことから足元を見て高い値段を付けるようになっていった。だから地元のお客さんは行かないようになってね。そしてコロナでしょ。当てにしていた客足が途絶えて、今さら安くしても一度逃げたお客さんは戻ってきません。商売はお得意さんを大事にしないとね」

 一度信用をなくせば、挽回するのは難しい。大阪は商売人の街だからこそ客の目も厳しい。コロナ禍は“商人道”を試される機会でもあるのだ。

 大阪では商人に対して行政の対応にも問題がありそう。

「給付金は申請からいつまで経っても調査中で、最終的にはもらえませんでした。そして、大阪府からも出ない。理由を聞いても言わないから、やりようがありませんよね」

 真面目に商売をやってきて、コロナで客足が3分の1になったにもかかわらず、納得がいかないのは当然のこと。

 しかし、潤子さんは気持ちを切り替えて店頭に立つ。それは、コロナ禍でも来てくれる客を迎え入れるためだ。客は口コミや紹介が多く、「安田商店で買った縁起物は御利益がある」と言う。

 潤子さんは自らオリジナル商品を手がけ、ここでしか買えない縁起物を数多く扱っている。木彫り職人に独自のオーダーを入れ、色やデザインも細かく注文。噂を聞きつけて遠方から鷹の木彫りを買いに来た客が「日本中探して、やっと理想のものに巡り合えた」と喜んだこともあったという。

商売繁盛の神「仙台四郎」

 店内は所狭しと、招き猫やだるま、干支の置物などが山積み。あまりの多さに商品管理が追いつかず、一度、数十万円もする大黒天が万引されたことがあった。

 あんな重いものをどうやって盗んだのかは不明だが、数日後にシャッター前にこっそり返されていたのだという。

「きっと罰が当たったのよ。ケガをしたとか、何か悪いことが起こったのかも。うちの縁起物は御利益が大きいけど、悪い気を起こしたら運が逃げていくの」

 そんなことも噂になり、その後は万引がなくなったようだ。商売繁盛の神と呼ばれる「仙台四郎」も扱っているが、美容院のオーナーに潤子さんは正式な置き方を教える。入り口の専用テーブルに鎮座した「仙台四郎」を見た客は「四郎さんを大事にしている」と感動し、さらに客を連れてくるようになった。これだって御利益だろう。

 大阪のパワースポットはコロナに負けない。

(取材・文=中森勇人)

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