「議決権種類株式」導入で株高に? 市場のテコ入れに動いた経産省の思惑
新興企業を大きく育てようと、経産省がテコ入れに動き始めた。今月、東証の会議で「議決権種類株式」の導入が必要だと問題提起したのだ。
あまり聞き慣れないだろうが、「議決権種類株式」とは、議決権について有利な設定がされている種類株式のこと。簡単にいえば、株主総会で行使できる1株あたりの議決権が普通株式よりも多く付与され、10倍の議決権を有することも可能になる。
もうお分かりのように、これは新興企業の創業者をバックアップするもので、米国などでは一般的だ。企業の創業者が上場時に複数の議決権を持つ種類株式を付与されることが多く、テクノロジー系企業では4割超がこの仕組みを採用している。メタ(旧フェイスブック)やグーグルの親会社のアルファベットなども導入し、うまく使いこなして成長してきた。フロリダ大学の調査によれば、この仕組みを導入した企業の上場後の株価上昇率は45%(上場後3年間)で、平均の23.7%に比べて2倍近い上昇になっている。
ところが日本では、「議決権種類株式」の上場は認められているものの、いろいろと制約があって、活用事例は1企業のみだ。2014年、旧マザーズ市場に上場したロボットスーツ開発のベンチャー企業サイバーダインである。種類株式が東証で認可されたのは、同社の特殊技術が軍事利用されないための“買収防衛策”とのことだったが、上場後一度もファイナンスを実施しておらず、また株価は16年の上場来高値に比べ9割安の水準に低迷している。