小沢コージ
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小沢コージ自動車ジャーナリスト

雑誌、web、ラジオ、テレビなどで活躍中の自動車ジャーナリスト。『NAVI』編集部で鍛え、『SPA!』で育ち、現在『ベストカー』『webCG』『日経電子版』『週刊プレイボーイ』『CAR SENSOR EDGE』『MONOMAX』『carview』など連載多数。TBSラジオ『週刊自動車批評 小沢コージのカーグルメ』パーソナリティー。著書に『クルマ界のすごい12人』(新潮新書)、『車の運転が怖い人のためのドライブ上達読本』(宝島社)、『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた 27人のトビウオジャパン』(集英社)など。愛車はBMWミニとホンダN-BOXと、一時ロールスロイス。趣味はサッカーとスキーとテニス。横浜市出身。

夢のロータリーエンジン復活!新型マツダMX-30ロータリーEVはここが凄い

公開日: 更新日:

マツダMX-30ロータリーEV(車両価格:¥4,235,000/税込み~)

 先週のトヨタ新型センチュリーに続き、またまた意義深い国産新車が登場した。その名はマツダMX-30ロータリーEV。一見単なる既存コンパクトSUVの追加グレードであり、販売台数もそれほど出ないだろう。

 だがその意義はデカい。なぜならコイツはマツダが2012年に製造を止めた世界で唯一のロータリーエンジンを搭載しており、まさにマツダ、いや日本が世界に誇るべきテクノロジーの復活だからだ。

 ただし以前とは違いがあって、それはエンジンに既存の2ローター13B型ではなく、完全新作の1ローター8C型を使っていること。そしてそのエンジンを発電専用として使っていることだ。

 ロータリーの爆発的加速を直に味わうことはできないし、ロータリーサウンドも恐らく期待できない。しかし再びロータリーに出会えたことが嬉しいし、ソイツが市販されること自体が喜ばしい。それくらいの夢プロジェクトなのだ。

小型軽量、高効率の1ロータータイプ8C型ができるまで

 そもそもロータリーエンジンとは、既存の円筒形シリンダーを使ったレシプロエンジンとは全く違い、三角おにぎりのようなローターが楕円のハウジングの中を回ってパワーを引き出すシクミ。

 ピストンが生んだ上下運動をクランクシャフトを使って円運動に変える必要はないし、爆発力を直接円運動として取り出せるので、上下振動が出にくく、一回転に3回も爆発するのでパワーも出る。

 一方で構造的に燃料室が平べったく、なおかつ燃焼室が常に動いて放熱するので、燃料が燃え残りやすく燃費も悪い。だからこそ13Bレネシスというエンジンは、2012年のマツダRX-8の終焉とともに消え去ったのだ。

 ただしロータリーは軽量コンパクトでパーツ点数が少なく、燃費以外はメリットが多い。そこを生かすために今回マツダ開発陣はロータリーを発電機専用として新設計。その結果生まれたのが、より小型軽量で効率のいい1ロータータイプの8C型なのだ。

 そして既存バッテリーEVのMX-30EVの電池を半分減らしてエンジンルームに載せ、電池が切れたらロータリーで発電してモーターを回す、プラグインハイブリッドに仕立てた。それが今回の新型MX-30ロータリーEVというわけ。

これはEVの現実的な答えの1つだ

 今回はプロトタイプ撮影で試乗は不可。だが実力の一旦は垣間見えた。

 まず凄いのはコンパクトSUVのMX-30EVの車内スペースを犠牲にしてないこと。エンジンは薄っぺらく発電用ジェネレータや駆動用モーターと合わせてフロントノーズにすっぽり入る。だから室内スペースはMX-30EVと全く変わらない。フロント席に筆者が乗った状態でリア席にも普通に座れる。

 ラゲッジ容量もMX-30のガソリンタイプよりは狭いが、MX-30EVと全く同じ366ℓを確保。

 それでいてモーター出力はEVタイプより少し大きいくらいで速さは問題ナシ。気になる価格もEVより30万円弱安い423万5000円から。EV航続距離は電池が半減した分減ったが、それでもモード走行で107km走る。

 絶対的には安くないが、充電していればバッテリーEVとして十分走れ、電気が切れてもガソリンを使って800km前後は走れる実力を持つ。

 つまり、ちょっと安くて充電切れの心配がない新手のEVとして魅力的なのだ。何よりも、世界のどのメーカーも量産を諦めたロータリーエンジンをモノにし、現代的にアジャストしてるのが凄い。

 EVの現実的な答えの1つ。その欠点のなさと室内スペースの効率的広さを、ぜひみなさんにも味わっていただきたい。

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