新型リーフついに初公開! 効率&効率の超効率戦略EVで日産を救えるか?
日産リーフ(価格未定)
「効率、効率、効率重視で効率的に開発していこうよ!」(リーフ担当エンジニア)
今週、年内発売予定の新型EV、3代目日産リーフの詳細が公開された。何より今の日産の吃緊の課題は負債。5月の決算では6709億円の純損失と人員2万人削減のリバイバル計画を発表し、早急に体質を改善する。
一方、世界最大の水商売とも言われる自動車ビジネスだけに、実は世界的ヒットを飛ばせば赤字などすぐ解消できる。となると、本当に重要かつ気になるのは近々出るはずの新車=3代目リーフとなるわけだが、既に3月には外観デザインを公表。残る詳細報告が待たれていた。
というわけで、まず注目はサイズと迫力で、一見確かにワイルドにSUV化。よりデジタル化したVモーショングリルや、LEDを細かく散りばめたフロントマスクや、浮き上がるようなリアのLEDホログラムコンビランプが印象的だ。
加えて日産独特のオリエンタルデザインも特徴で、ホイールは日本庭園を意識した「水引き」模様だし、2本と3本のラインは「ニッサン(2と3)」を意味しているらしい。
一方意外なのは扱いやすさで、全長は4480mmから4360mmに12㎝も短くなり、全幅は1810mmと20mm広くなり、全高の1550mmはさほど変わらない。
細かいところではフロントオーバーハング(主にバンパー長)が200mmほど短くなり、最小回転半径も5.3mと10cmほど短縮され、かたやラゲッジルームはほぼ変わらぬ420ℓレベル。
昨今、新しくなるたびに拡大する新車達とは裏腹に、SUV化で一見大きく見せつつ、逆に実質コンパクト化し、取り回しを向上させている。
単純なゴージャス化でもロングレンジ化でもない
意外なのはEVで最も大切な航続距離に関わる搭載電池量で、今までは40kWh&60kWhの2種だったが、52.9kWh&75.1kWhと共に拡大化。同時に航続距離は最大600km超えと伸びている。
ここに見え隠れするのは単純なゴージャス化でもロングレンジ化でもない。冒頭のエンジニアコメントにあったように、「効率化」である。
ボディは実質小さくし、取り回しや扱いやすさを改善しつつ、室内の広さは変わらないか、足元は広くし、同時にSUV化で見た目の迫力を増す。
何よりも航続距離は空力向上を図り、SUVタイプでは極めて高い空気抵抗係数cD値=0.26を記録。小さめボディに従来よりエネルギー密度を17%上げた大容量電池を効率的に搭載し、ラージ系EVに負けない性能を獲得する。
パワートレインも侮れない。グループ会社のジャトコと開発したモーターとインバーターとギアをセットにしたeアクスルを使い、従来よりスペース効率を高める。モータートルクは従来より大きい。
そのほかエネルギー効率を見直し、エアコンに従来より高効率なヒートポンプ式を先代に続き採用すると同時に、今まで捨てていたモーターやバッテリー、ナビ関係の発熱も回収。
日産らしくマジメで失敗しないEVという出来映え
ナビ関係は14インチと12インチの最新ダブルディスプレイだが、ナビリンクバッテリーコントロールを装備し、目的地に応じて夏は冷やしすぎない、冬は暖め過ぎない熱マネージメントを実現。
「ちりも積もれば山となる」ではないが、今まで捨てていた熱や無駄に作って居たエネルギーを細かく回収。より効率&効率重視の考えで無駄なく作り上げているのだ。
一方、モニターが電動で回ったり、ヤケに大型化していたりするような極端なデジタルエンタメ化や、テスラのような首が痛くなるような加速で勝負はしてこない。
あくまでも日産らしく、マジメにいまどきのEVを作り上げたという感じ。まさにインパクトではなく効率最重視のEVなのだ。
そして気になる価格は未発表だが、恐らく中国BYDや韓国ヒョンデほど安くはしてこないだろう。
というか、そこで勝負しても今のアジア勢に対抗できない。それ以上に、今後弾けるかもしれないEVバブルを考えるとパワーやデジタルインパクト勝負、コスト勝負は得策ではないと考えたのだろう。
つまりEVの世界普及を見越して大勝利を狙う大バクチなEVというより、日産らしくマジメで失敗しないEVという出来映えだ。
今回ここに大逆転はないだろう。ただし、リスクを抑えてマジメな日産ファンをちゃんと抑えた新型EVになっている。
これもまた一つの、今の日産流なのかもしれない。