トランプ大統領の「テレビ新聞潰し」が日本にも上陸する日
「アメリカに言論の自由はない。この国の民主主義は死んだ」
これは今の話ではない。2001年の9.11テロ事件の翌年、ニューヨークで会った某大学教授が、周囲を見回し、声をひそめて言った言葉である。
テロ事件からわずか1カ月ほどで、個人の人権を大幅に制限する「愛国者法」ができたためであった。当時はアルカイダとの“戦時”だった。11年にビンラディンが殺され、「悪法」は15年に失効したため、再びアメリカに民主主義が戻ってくるかに思えた。
しかし、それははかない夢だった。17年にトランプ政権ができると、言論の自由や民主主義などボロ雑巾のごとく捨て去られてしまったのである。
トランプは自分に批判的な既存メディアを「フェイクニュース」「国民の敵」と繰り返し攻撃することで、メディアの信頼性を意図的に低下させようとしている。ニューヨーク・タイムズが大統領選で民主党候補者のハリスを支持する社説を掲載したことを挙げ、名誉毀損されたとして、日本円にして2兆円を超える莫大な損害賠償を求める訴えを起こした。これに象徴されるように、“暴力的”なやり方で自分を批判するメディアを潰しにかかっている。テレビ局に対しては、「放送免許取り消し」をちらつかせて恫喝する。アメリカの良質なメディアは窒息寸前である。