学術会議予算は目の敵の一方で軍事研究費18倍増の高止まり
日本学術会議への「国庫負担約10億円」を行革の対象にした菅政権。実は5年前、安倍政権に集められた有識者らは学術会議の予算増加を提言していた。
内閣府は2014年7月に「日本学術会議の新たな展望を考える有識者会議」(座長=京都芸術大学長・尾池和夫氏)を設置。15年3月まで計7回、議論を重ねた。
報告で〈幅広い学問分野の科学的知見を動員して審議した成果を政府や社会に提示する組織として重要性が高まっている〉と分析。「事務局の体制強化」と「予算のさらなる充実」を求めた。
■予算増の有識者提言をガン無視
この提言を安倍政権はガン無視。予算は10億円前後に据え置かれてきた。そんな政府・自民党内のムードは、学術会議予算の切り込み役を任された河野行革相のブログからうかがえる。17年1月に〈謹賀新年研究者の皆様へ〉と題し、〈科学技術振興予算は今後、増えません〉と断言していた。
問題視したのは科学技術費の伸び率だ。赤字国債を出さずに当初予算を最後に編成できた1990年度と2016年度の予算の内訳を比較。16年度の科学技術費の伸び率は2・7倍と、社会保障費の2・8倍並みと指摘し、〈社会保障の自然増をどう抑えるかという議論をしている中で、科学技術振興予算を増やせるというのはまったくの幻想〉と切り捨てた。