【駐在員が見たロシアの今】(上)間近に迫った6年に1度の大統領選…ポスターと大統領のやる気にギャップ

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 選挙の方は、プーチン大統領の通算5選が確実な「信任投票」だ。本人は「やる気満々」だが、社会に冷めたムードが漂っている。そもそも再出馬の流れは、20年の憲法改正で多選制限を撤廃した時点で決まった。外国から眺めている人に次のことは意外かもしれない。ロシアは戦争に負けておらず、独裁者はピンチに陥っていない。70歳代にしては健康で、潜在的な政敵は国外や獄中へと追放している。

 こんな「強権主義国家」を、曲がりなりにも選挙をやっているという事実から「民主主義国家」と見なす人は、ナイーブな欧米諸国に多そうだ。2年前の開戦から「坊主憎けりゃ」との理屈で、ロシア国民に対するヘイト(憎悪)が相次いだ。戦争を起こした独裁者を生んだのは投票した有権者ではないのかと、私にもよく質問された。

 ただ、これは自由な選挙しか知らない人の発想。中世でも古代でもいいので、想像してほしい。血の臭いが好きな暴君がいて、被支配者は片棒担ぎか搾取された奴隷で、形だけ「民意」で為政者を選ぶ社会があったとする。王が戦に明け暮れ、近隣国に迷惑を掛けまくっていた場合、奴隷が責任を負うのか。

 筆者は政治学者ではないので、民主主義の理論については門外漢だが、国民を完全に免責するとは言わないまでも、どこまで道義的な罪を着せられるのか。これが「ロシア人」を語る上で、一筋縄ではいかない難しい点だろう。 (つづく)

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