ヤクルト奥川の右肘炎症は吉 投球禁止調整もデータが証明

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「投げられるから投げさせて壊れる」

 ただ、奥川にとってこの右肘炎症は「ケガの功名」になるかもしれない、との声もある。

「奥川は昨夏の甲子園で目いっぱいの投球をした疲労が蓄積していたにもかかわらず、甲子園直後に行われたU18で好投した。

 コントロールが良く、切れのある球を投げる技術とセンスがあるから、だましだましでも結果を残せたのです。ただ、こうした投手は実は一番危ない。高校を卒業して間もない時期は体が完全に出来上がっていない。にもかかわらず、投手不足などのチーム事情により、『投げられるから投げさせて壊れる』ケースは枚挙にいとまがない。ヤクルトの昨年のチーム防御率は12球団ワーストの4・78。その可能性は十分にあった。まして奥川は高校時代、個性、自主性を尊重する指導方針もあり、体力や筋力を身に付けるための追い込んだ練習をしていなかったからなおさらです」(球界OB)

 ヤクルトでは、背番号「11」の先輩である最速161キロ右腕の由規(現楽天)が、プロ2年目に早くも一軍ローテ入りし、3年目には12勝をマークするも、4年目に右肩を故障した。その後は一進一退の状態が続いた。高卒1年目で言えば、楽天の釜田も2012年に150キロ超の直球を武器に1年目から20試合に登板(先発は19試合)、7勝を挙げたものの、2年目に右肘を疲労骨折するなど故障に苦しんだ。体が出来上がっていない段階から高いパフォーマンスを発揮し続けた反動が出て、大ケガに至った投手は何人もいるのだ。

「奥川選手は2年時から甲子園で投げ、昨年は春夏甲子園、U18、国体とフル回転している。その疲労が完全に抜け切っていないのでしょう」

 こう言うのは、メディカルトリート代々木治療院の若月順氏だ。

「炎症箇所が肘の内側なのか外側なのか、腱なのか骨なのか、にもよりますが、一般的には炎症がある状態で無理をすると、内側側副靱帯を損傷したり、関節にいわゆるネズミ(遊離軟骨)ができたり、疲労骨折したりというケースが考えられます。肘をかばうことで肩に負担が来てしまうこともある。奥川選手はバランスのよいフォームで高い技術があり、すぐにでも結果を残す可能性はありますが、松坂大輔選手やダルビッシュ選手、田中将大選手のように、高卒1年目から継続して活躍できる選手はむしろ特別。若い投手のケガは酷使によるものが多い。身長が止まってから2年くらいが経過しないと成長をつかさどる軟骨が固くならず、高い負荷がかかるパフォーマンスに耐えられないからです。炎症が見つかったことを前向きにとらえ、まずは体づくりやコンディショニングを強化した方がいいのかもしれません」

 奥川は、「これから長く野球をやりたい。この1年は土台づくりという気持ちでやっているので、焦りとかは全くない。これからどんどん回復していくと思います」と言っている。目標とする息の長い投手になるためにも、今回の「一時休止」が吉と出るのか。

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