渋野日向子から笑顔が消えた…初リンクスから“往復ビンタ”

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【スコットランド女子オープン】第1日

 渋野日向子(21)に笑顔がなかったのは、声援なしのせいではない。

 新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けて無観客開催となった今大会は、連覇をかけて臨む次週の全英女子オープンの前哨戦でもある。大会初日は濃霧でスタートが2時間遅れたものの、貫禄のプレーを見せてくれると、推薦出場を認めた主催者は期待したはずだ。しかし、初のリンクスに打ちのめされた。

 試練が待っていたのは2オーバーで迎えた7番パー5だった。左セミラフから打った第2打が深いバンカーにつかまる。第3打はバンカー前方の深いラフに出すのが精いっぱい。第4打はクラブが芝に絡んで振り抜けず、引っかけたボールはグリーン左ラフへ。アプローチもピン4メートルと寄らず、2パットのダブルボギー。

 8番パー4も花道からのアプローチが5メートルと大きくショートして2パットボギー。5オーバーまでスコアを落とし、バッグを担ぐ青木翔コーチとも無言の気まずい雰囲気になっていた。

 前半でバーディーを一つも奪えず、こうなると立て直すのは困難。海に近いバックナインもスコアを3打落とし、ボロボロの8オーバー、暫定126位で初日を終えた。

「情けないです。その中でも今週練習していたアプローチでパーが拾えたこともあり、収穫はありました。明日はバーディーを取りたいです」(渋野)

 渋野といえば、ボギーをたたいた直後のホールでバーディーを取る「バウンスバック」が代名詞だが、この日は7番ダブルボギー、8番ボギーなど、前半、後半とも連続ボギーがあり、昨年には見られない内容だった。

 日本人として42年ぶりにメジャー優勝した昨年の全英会場は、海沿いのリンクスではなく、日本のゴルフ場によく似た林間コースだった。

「今年(全英女子で)連覇できるチャンスがあるのは私だけ」という渋野にとって、この日が人生で初のリンクスでの試合だった。

 渋野はコロナ禍で国内大会が中止になっている間、「アプローチ練習を重点的にやっていた」という。しかし、膝まで長く伸びるフェスキューの深いラフに入れたら男子プロでもコントロールは難しい。質は違えど、深いラフでのクラブフェースの開き方、ヘッドの入れ方、抜き方など、どれだけ研究していたのか。初日のプレーを見る限り、甚だ疑問だ。

 名物の風にしても、初日はピンが折れるほどの強風が吹き荒れていたわけではない。それでもバーディーパットは一つも決められなかった。本場のリンクス対策として、河川敷やシーサイドなど、風の強いコースでラウンドしたという話も聞こえてこない。

■米ツアー挑戦準備が裏目

「らしくない」ゴルフのもうひとつの要因は、来季のプランだ。

 渋野はメジャー優勝で得た、米女子ツアーのライセンスを返上。今季は国内ツアーに専念し、海外試合はスポットで参戦。年末の米女子ツアープロテストを受けて、来季から主戦場を米国へ移す青写真を描いた。

 そこで飛距離を伸ばすためにトレーニングに励み、体をひと回り大きくした。スタンス幅を狭くするなど、スイングも改造。課題といわれた「アプローチのバリエーションも増やした」(渋野)。

 ツアー関係者の間では「昨年、あれだけの結果を残したのにいろいろなことをやりすぎる。ゴルフのレベルが低下した」との声もあった。

 ちなみに、コロナ禍により今年の米女子ツアーテストは中止。来季米国でプレーするためには、今季中に出場できる海外試合で優勝しなければならない。今回のスコットランド2連戦の後は帰国しないで、そのまま渡米。国内ツアーを欠場して9月のANAインスピレーション、10月の全米女子プロのメジャー転戦計画を決めた。ハードルがかなり高くなったことは大きな誤算に違いない。

■トップと12打差

 初日は27選手がホールアウトできず日没サスペンデッドになった。渋野はトップとすでに12打差も開いてしまった。決勝進出には爆発的なスコアが求められる。まさかの予選落ちなら、気持ちの切り替えが早くても、悪いイメージのまま、来週の舞台であるロイヤルトゥルーンGCに向かうことになる。

 今大会は、連覇を狙う全英の練習ラウンドのつもりで参戦したのかもしれない。そうだとすれば、2日目は雨予報が出ているからいい経験にはなるだろうが、ショット、アプローチ、パットのすべてに精彩を欠く渋野。早急に立て直しが必要だ。

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