著者のコラム一覧
元川悦子サッカージャーナリスト

1967年7月14日生まれ。長野県松本市出身。業界紙、夕刊紙を経て94年にフリーランス。著作に「U―22」「黄金世代―99年ワールドユース準優勝と日本サッカーの10年 (SJ sports)」「「いじらない」育て方~親とコーチが語る遠藤保仁」「僕らがサッカーボーイズだった頃2 プロサッカー選手のジュニア時代」など。

<2>敵地スタジアムは9年ぶり 森保J代表選手も驚くマスカットの変貌ぶり

公開日: 更新日:

ベテラン組は「おっさんのパワーを見せつける」と気合

 9月2日のカタールW杯最終予選初戦黒星のリベンジを果たすべく、敵地マスカットに乗り込んだ日本代表。16日(日本時間17日午前1時キックオフ)の決戦を控え、14日からは非公開練習に突入。オマーン対策を入念に確認した。筆者も同日から現地で本格始動。9年ぶりにスルタン・カブース・スタジアムを訪れたが、隣接地にショッピングセンターができ、練習場やテニスコートも美しく整備されるなど、全体の変貌ぶりに驚かされた。

 14日は現地時間の午前11時からオンライン取材。主将の吉田麻也(サンプドリア)を筆頭に長友佑都(FC東京)、大迫勇也(神戸)の30代トリオが登場。「おっさんのパワーを見せつける」とフィールド最年長の長友が気合を入れた。

 万が一、ここでオマーンに連敗するようなことがあれば、日本代表のカタール行きに暗雲が立ち込めるのはもちろん、彼らの代表キャリアも断たれる可能性がある。それだけは絶対に回避しなければならない。

商業施設も入館時にワクチン接種と陰性証明を提示

 午後6時からスタジアム隣の練習場で行われる練習で彼らがどんな様子を見せるのか気になったが、その前にやるべきことがある。それは日本帰国時に提出するPCR検査での陰性証明を出してくれる病院探しだ。

「隣の病院で可能なはず」と聞きつけて行ってみると、裏手の駐車場がドライブスルー検査場になっていた。「鼻咽頭のぐい液と咽頭ぬぐい液の混合検査で、日本フォーマットの証明を翌日発行する形で18リアル(約5500円)」と言われ、とりあえず安堵した。日本はドライブスルー検査が非常に少ないが、この方式なら受検者にとっては手軽。今後、日本国内にもぜひ整備してほしいと感じた。

 その後、ショッピングモールに立ち寄ったが、入館時にワクチン接種とPCR陰性証明をアップロードしたQRコードの提示を求められた。前日空港で示したものと同じだ。が、携帯を探してもPDFがすぐに出てこず、先に見つかったワクチン証明を提示したら中に入れた。

 こうしたチェック機能は日本より進んでいる様子。だからこそ、11月に入ってからの同国の感染者数は連日10人台で推移しているのだろう。人口510万の小国という利点もあり、コロナをコントロールしやすい環境にあるのかもしれない。

開発が進むマスカットに驚く

 迎えた夕方。美しい夕日を見ながら約30~40分かけてスタジアムまで歩いた。道すがらには複数のビルが立ち並ぶ。2004年の同国初訪問時は何もない印象だったが、年々開発が進んでいる模様だ。スタジアム横の練習場も以前はボコボコの砂地の中にあったが、今は周囲がしっかりと塗装され、歩きやすくなっている。

 しかも、目の前にはオマーンモールという巨大なショッピングセンターができていた。日本代表の公式ユーチューブ「チームカム」の14日アップ分の中で守護神・GK権田修一(清水)が「2012年11月のブラジルW杯最終予選で来た時は目の前に山があるだけだったのに……」と驚き半分でコメントしていたが、筆者も全く同じ感想を抱いた。

 森保監督らスタッフは選手より早くグランド入りし、練習準備を進めていた。それより早く到着したのが反町康治技術委員長。練習前のランニングを日課としているようで、コロナ太りした1年前から10㎏減を達成したという。

 今回は現地取材記者が総勢6人を少なかったため、リアル囲み取材もあったが、東京五輪世代を大量招集した11月2連戦を貴重な融合の機会と捉えているという。次戦では期待の三笘薫(サンジロワーズ)や上田綺世(鹿島)ら東京五輪世代が目に見える結果を残し、チーム活性化とオマーン戦リベンジの両方を果たせれば理想的だ。

練習は2時間以上に渡った

 練習は一足先にチームを離れた守田英正(サンタクララ)をのぞく27人でスタート。ランニング、ボール回しが終わったところで報道陣は締め出された。

 スタッフが周囲を見回りし、我々を近づけないように厳重な警戒態勢を敷いていたため、中の様子は伺い知ることはできなかったが、全員がバスに乗って帰路に着いたのは午後8時半近く。かなりの長時間練習が行われたとみられる。

 柴崎岳(レガネス)と吉田がオマーン人警備員の写真の求めに応じ、長友と南野拓実(リバプール)の左サイドコンビが意見交換しながら引き上げてくる傍らで、11日のベトナム戦(ハノイ)を欠場した酒井宏樹(浦和)は「もういっぱい、いっぱいです」と苦笑していた。

 それだけ負荷のかかるトレーニングを積めたのなら、次戦はもう大丈夫なのではないか。彼の復調は守備陣にとって非常に大きい。来たるべき大一番に期待して良さそうだ。(つづく)

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • サッカーのアクセスランキング

  1. 1

    JリーグMVP武藤嘉紀が浦和へ電撃移籍か…神戸退団を後押しする“2つの不満”と大きな野望

  2. 2

    FW大迫勇也を代表招集しないのか? 神戸J連覇に貢献も森保監督との間に漂う“微妙な空気”

  3. 3

    W杯最終予選で「一強」状態 森保ジャパン1月アジア杯ベスト8敗退からナニが変わったのか?

  4. 4

    W杯本番で「背番号10」を着ける森保J戦士は誰?久保建英、堂安律、南野拓実らで競争激化必至

  5. 5

    W杯8強へ森保J「5人の重要人物」 頭痛の種は主将・遠藤航の後継者…所属先でベンチ外危機

  1. 6

    サッカーW杯「日本単独開催」は夢のまた夢…拡大路線でもはや「共催」か「中東」の二者一択

  2. 7

    待望の独1部初ゴール!元軍人の父を持つ帰国子女の日本人DFが代表CBに殴り込み…森保監督も用意周到に“手当済み”

  3. 8

    なでしこ史上初「外国人監督誕生」に現実味…池田太監督の退任の裏にJFA会長の強い意向

  4. 9

    なでしこ初の外国人監督は“イケオジ”…ニルス・ニールセン新監督の手腕と評判 

  5. 10

    Rソシエダ久保建英が英リバプール入りなら遠藤航は“玉突き放出”へ…11月はゴラッソ連発で存在感マシマシ

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    JリーグMVP武藤嘉紀が浦和へ電撃移籍か…神戸退団を後押しする“2つの不満”と大きな野望

  2. 2

    広島ドラ2九里亜蓮 金髪「特攻隊長」を更生させた祖母の愛

  3. 3

    悠仁さまのお立場を危うくしかねない“筑波のプーチン”の存在…14年間も国立大トップに君臨

  4. 4

    田中将大ほぼ“セルフ戦力外”で独立リーグが虎視眈々!素行不良選手を受け入れる懐、NPB復帰の環境も万全

  5. 5

    悠仁さまの筑波大付属高での成績は? 進学塾に寄せられた情報を総合すると…

  1. 6

    FW大迫勇也を代表招集しないのか? 神戸J連覇に貢献も森保監督との間に漂う“微妙な空気”

  2. 7

    結局「光る君へ」の“勝利”で終わった? 新たな大河ファンを獲得した吉高由里子の評価はうなぎ上り

  3. 8

    飯島愛さん謎の孤独死から15年…関係者が明かした体調不良と、“暗躍した男性”の存在

  4. 9

    巨人がもしFA3連敗ならクビが飛ぶのは誰? 赤っ恥かかされた山口オーナーと阿部監督の怒りの矛先

  5. 10

    中日FA福谷浩司に“滑り止め特需”!ヤクルトはソフトB石川にフラれ即乗り換え、巨人とロッテも続くか