著者のコラム一覧
元川悦子サッカージャーナリスト

1967年7月14日生まれ。長野県松本市出身。業界紙、夕刊紙を経て94年にフリーランス。著作に「U―22」「黄金世代―99年ワールドユース準優勝と日本サッカーの10年 (SJ sports)」「「いじらない」育て方~親とコーチが語る遠藤保仁」「僕らがサッカーボーイズだった頃2 プロサッカー選手のジュニア時代」など。

“鈍感力ゼロ”のエース・FW伊東純也が森保日本の命運を握る

公開日: 更新日:

伊東純也(ゲンク/28歳)

「そんな得点を取るタイプじゃないんで、自分でも驚いてる感じではありますけど、毎試合ゴールに絡んでやろうと思ってるので、それがうまく結果に出ているのかなと」

 1月27日のカタールW杯最終予選・中国戦。大迫勇也(神戸)の先制PKをお膳立てし、後半には自らダメ押し点を叩き出した伊東は、謙遜気味にこう話した。

 最終予選3連続得点というのは、あの三浦カズ(現・JFL鈴鹿)らに並ぶ記録である。今や森保日本のエースに躍り出た男は、無双状態にあると言ってもいいだろう。

 2月1日の天王山・サウジアラビア戦も、この男の一挙手一投足が日本の命運を左右する。

■「戦術・伊東」と言われるのも納得

 2021年11月のベトナム戦で決勝点を挙げた後、「自分がエースだと思ったことは全然ないですね」と遠慮がちに笑った男の快進撃が止まらない。

 続くオマーン戦でも、チームが相手を攻略し切れずに苦しむ中、後半から登場した中山雄太(ズウォレ)とのタテ関係から三笘薫(サン・ジロワーズ)が入れたラストパスを沈め、値千金のゴールを決めて貴重な白星をもたらした。

 2021年9月の中国戦で大迫の決勝ゴールをアシストした場面を含め、最終予選に入ってからの伊東は、大半のゴールシーンに絡んでいる。

 とりわけ4(DF)-3(MF)-3(FW)にシフトしてからの輝きは異次元レベル。「戦術・伊東」と言われるのも納得だ。

 圧巻のパフォーマンスを見せても、常に淡々としている。アウェーのオマーン戦後のリアル記者会見に登場した際も、ニコリともせずに質疑応答に答えた。 

■「鈍感力」が強靭なメンタルの源

 会見終了後、筆者がグータッチで労うと快く応じてくれたが、その時も弾けるような笑顔はなかった。

「自分はあまりプレッシャーを感じるタイプじゃないので大丈夫。緊張感を楽しんで結果を出したい」と語っていたことがあったが、いつも平常心を保てる強心臓ぶりは非常に頼もしい。その強靭なメンタルは、もしかして「鈍感力」によるところが大かも知れない。

 2021年10月のサウジアラビア戦に敗れ、序盤3戦・2敗という危機的状況に瀕した直後のオンライン取材。伊東は、起床直後の寝癖のついたボサボサ頭で登場した。物事を深刻に捉え過ぎない天然キャラは指揮官の森保監督、ベテランの吉田麻也(サンプドリア)たち選手を逆に安堵させたのではないか。

 ピッチ内外で伊東の存在は、今や森保日本に必要不可欠なのである。

新妻のサポートで全開フルパワー

 そんな彼が、2021年11月のオマーン戦の直後に結婚を発表。和装姿で薬指に指輪をはめた新妻の左手を優しく握る写真をSNSに投稿して話題になった。

 母・由香さんが「家のことはほとんど何もできない息子」と話していたものだが、異国でサポートしてくれる存在ができたのは、何よりも心強かったことだろう。

 2017年12月の東アジアEー1選手権・北朝鮮戦(味スタ)で初キャップを飾った当時、本人にとってW杯は遠い存在だったに違いない。しかしながら、今では自分の力次第で手に届く状況にある。

 公私ともに充実した状態で迎えた2022年カタールW杯イヤー。未踏の大舞台に向かい、全開フルパワーで突き進もうとしている。

「自分は、そこまで先のことは考えてないタイプ。その場、その場でやってきた感じですね。自分も最初、代表に選ばれた頃は出てない時もありました。それでも、主力とかサブとかに関係なく、全員で目指すのがW杯だと思ってやってきました。試合に出てる以上はより一層、責任感を持ってやらないといけない。そういう意識は強まりました」

■中東の雄にリベンジを果たす

 日の丸を初めて背負った約4年前は人見知りが激しいのか、言葉数も少なく、記者泣かせとられていたが、トーク力も確実に向上している。

 試合後の得点シーンの振り返りなども、詳細に説明してくれるようになり、人間的な成長も色濃く感じられる。主力としての自覚が、自然と強まっているのだろう。ゆえに期待は高まる一方だ。

 目前に迫った2月1日のサウジ戦は、中国戦のような簡単な試合にはならないはず。思い返してみるとアウェーで黒星を喫したサウジ戦は、伊東は出場停止処分だった。

 試合に出られない分、ボール運びを率先して行うなどチームのサポート役に徹した。その時の悔しさを晴らすべき時が来た。埼スタのピッチで暴れ回り、中東の雄にリベンジを果たすーー。

 これこそが、背番号14の快足ウインガーに求められている最重要タスクに他ならない。

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