日本相撲協会・八角理事長に聞く 貴景勝はなぜ横綱になれない? 貴乃花の元弟子だから?

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「本場所での最後の一歩、半歩になる」

 ──その稽古の意図は。

「何回も何回もぶつかり稽古でぶつかって、クタクタになった状態で相手に頭を押さえられながらすり足をする。これは相当しんどいですが、その稽古が本場所での最後の一歩、半歩になる。それが1勝につながり、その1勝で横綱になれるかもしれない。私はこの稽古を(兄弟子の元横綱)千代の富士さんにやられました。そのおかげで横綱になれたようなものですよ。千代の富士さんが引退してからは、他の関取衆に頭を押さえる役をやってもらいましたが……遠慮があったんでしょうね。だから私は最後の1年はダメだった(苦笑)」

 ──理事長自身の経験談なのですね。

「こうした稽古を我慢してやることが、貴景勝にとって横綱への道につながると思う。はたかれても一歩前に出れば土俵に落ちずに残れるかもしれないし、最後の一歩で負けたはずの相撲が取り直しになるかもしれない。それくらいしぶとくいかないと、横綱になるのは難しい」

 ──確かに、貴景勝ははたかれると簡単に落ちるイメージがある。

「そう思われてしまうと、なおさら昇進には不利でしょう。その印象をはね返すほどの圧倒的な力強さがあればまだいいのですが……。もちろん、相手の力士に『いざとなれば、はたいて落とせばいい』と思われてはいけません」

 ──そうしたことも貴景勝には話したのですか?

「それはしません。最終的には自分の感性ですから。自分で考えて努力する人が横綱になるのが、大相撲ですから」

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