「おいおい、壊さんでくれよ。ワシの家やが」初代増位山の一言が示した部屋制度の根幹

公開日: 更新日:

 後継者不在や師匠の急死などで部屋が閉じられる場合は、一門内で事情を察し、弟子が相撲を続けられるようどこかが受け入れて収まるとはいえ、これも簡単ではない。

 木瀬部屋が不祥事で閉鎖され、一門で理事長でもある北の湖親方が預かった際は、2年後に無理筋を通して再開させたが、預かり中は地方場所で分宿せざるを得ないなどの一面もあった。

 物件確保もスカウトも師匠の努力次第。指導者ライセンスがあるわけでなし、協会から学びの支援があるわけでもない。部屋維持費や力士養成費などは出ても、世間の一部でいわれるような「商売」ではない。

 宮城野親方(元横綱白鵬)は協会からの力士育成業務委託に反したとはいえるが、委託した側の責任は問われず、協会主導の再教育もなく、「ワシの家」を明け渡せ、別の師匠が「ワシの家」で預かれ、それを少人数の一門で決めろと聞こえる。

 入門者が減り続けている。今度は引退後に部屋を持って強い力士を育てたいと思う者も、減らなければいいのだが。

▽若林哲治(わかばやし・てつじ)1959年生まれ。時事通信社で主に大相撲を担当。2008年から時事ドットコムでコラム「土俵百景」を連載中。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ドジャース佐々木朗希に向けられる“疑いの目”…逃げ癖ついたロッテ時代はチーム内で信頼されず

  2. 2

    ドジャース佐々木朗希の離脱は「オオカミ少年」の自業自得…ロッテ時代から繰り返した悪癖のツケ

  3. 3

    ドジャース佐々木朗希「今季構想外」特別待遇剥奪でアリゾナ送還へ…かばい続けてきたロバーツ監督まで首捻る

  4. 4

    中日・中田翔がいよいよ崖っぷち…西武から“問題児”佐藤龍世を素行リスク覚悟で獲得の波紋

  5. 5

    西武は“緩い”から強い? 相内3度目「対外試合禁止」の裏側

  1. 6

    「1食228円」に国民激怒!自民・森山幹事長が言い放った一律2万円バラマキの“トンデモ根拠”

  2. 7

    “貧弱”佐々木朗希は今季絶望まである…右肩痛は原因不明でお手上げ、引退に追い込まれるケースも

  3. 8

    辞意固めたか、国民民主党・玉木代表…山尾志桜里vs伊藤孝恵“女の戦い”にウンザリ?

  4. 9

    STARTO社の新社長に名前があがった「元フジテレビ専務」の評判…一方で「キムタク社長」待望論も

  5. 10

    注目集まる「キャスター」後の永野芽郁の俳優人生…テレビ局が起用しづらい「業界内の暗黙ルール」とは