著者のコラム一覧
鈴村裕輔野球文化学会会長・名城大教授

1976年、東京都出身。法政大学博士(学術)。名城大学外国学部教授。主な専門は政治史、比較思想。野球史研究家として日米の野球の研究にも従事しており、主著に「MLBが付けた日本人選手の値段」(講談社)がある。スポーツを取り巻く様々な出来事を社会、文化、政治などの多角的な視点から分析している。アメリカ野球学会会員。

ピッチクロックが新たな労使交渉の争点になる…大谷は時短化に「間違いなく負担が増えている」

公開日: 更新日:

 一方、機構側の見解は異なる。機構が強調するのは、ピッチクロックの導入により、昨季の試合時間は1985年以来の平均2時間40分と前年に比べて24分短縮された点である。そして、投手のケガとピッチクロックの導入とが関係することを示す証拠はなく、むしろアマチュア時代に肘などの既往歴のある選手が増加したことが背景にあるとしている。

 機構がピッチクロックを導入した理由の一つに、投球間隔を短くすることで試合の展開を速くし、視聴者の関心をつなぎとめる狙いがある。視聴者の限られた時間を他のプロスポーツ中継やオンラインゲーム、テレビ番組や映画などのオンライン配信と奪い合う現在、「野球の中継は冗長」という印象は視聴者の野球離れをもたらし、球界にとって重要な収入源である放映権料に影響を与えかねない。

 何より、MLBPAが反対するということは、今後の労使交渉の材料になることを示唆する。すなわち、MLBPAが導入を拒むのはサラリーキャップ制や国際ドラフトであるから、機構や経営者はピッチクロックの緩和を条件にこれらの制度の導入を迫るのは、有効な戦略となる。

 それだけに両者の駆け引きは今後も激しいものとならざるを得ないのである。

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