著者のコラム一覧
鈴村裕輔野球文化学会会長・名城大教授

1976年、東京都出身。法政大学博士(学術)。名城大学外国学部教授。主な専門は政治史、比較思想。野球史研究家として日米の野球の研究にも従事しており、主著に「MLBが付けた日本人選手の値段」(講談社)がある。スポーツを取り巻く様々な出来事を社会、文化、政治などの多角的な視点から分析している。アメリカ野球学会会員。

大リーグ殿堂入りの基準は時代とともに変わる 背景には指標開発による分析の進化も

公開日: 更新日:

 大リーグにおいて、打者であれば3000安打や500本塁打、投手の場合は300勝を達成すれば、資格初年か否かを別にして、多くの場合、野球殿堂で顕彰されている。

 一方、時代の推移に伴う野球に対する人々の見方の変化も、殿堂への選出に求められる基準や対象となる選手の層を変えている。

 例えば、2002年に殿堂入りしたオジー・スミスである。シーズン本塁打は6本が最高と打撃での活躍は乏しかったものの、カージナルス時代の監督であったホワイティ・ハーゾックが「毎シーズン何勝か上積みしてくれた」とスミスの遊撃の守備を高く評価したため、守備だけと思われていた選手への見方そのものが好転する。

 殿堂入りの候補から外れた選手らを審議するベテランズ委員会が、1994年にフィル・リズート(元ヤンキースの遊撃手)を選出したのも、守備の貢献度の高さが評価された結果だった。

 あるいは、各種の指標の開発による野球の分析の進化も、選手の評価に新たな尺度をもたらしている。


 出塁率と長打率を合計したOPSを、球場の特性などを加味したパークファクターで調整したOPS+は100でリーグの平均となり、他のシーズンや通算記録の比較を可能にするための指標として考案された。その結果、異なる時代の選手の成績を相対化して比較できるようになった。

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