ドジャース大谷に「投げたいのに投げられない」ジレンマ…チーム投壊で打てども打てども勝てず
崩れる「勝利」の前提
当初、大谷の投手としての復帰時期は5月の予定だった。が、先発が相次いで離脱、負担増のリリーフ陣も持ちこたえられなくなって、投手としての復帰時期はいよいよ先延ばしに。フリードマン編成本部長は「10月のポストシーズンの戦いを見据えて(投手としての調整の)ペースを落とした」と言い出した。投手としての復帰はつまり、プレーオフをにらんでのことなのだ。
すべてはチームの勝利のため。大谷は昨年のワールドシリーズ直後、フリードマン編成本部長に対して「あと9回、やりましょう」と言ったといわれる。ドジャースにとっても、大谷にとっても、最大の目標は21世紀初となるワールドシリーズ連覇だ。投手復帰を先送りしての打者専念も「チームの勝利のため」だからこそ、大谷は納得している。
しかし、状況は変わってきた。大谷が点を取るそばから、投手がそれ以上の得点を吐き出してしまう。5月に入ってからの大谷は、17試合で71打数25安打(打率.352)、10本塁打、21打点と打ちまくっている。5月に10本塁打は自己最多だ。48試合で17本塁打は、162試合だと57本。昨年の54本塁打を上回るペースで一発を放っている。
にもかかわらず、チームは5月に入って8勝9敗と負け越し。辛うじてナ・リーグ西地区首位にいるものの、2位のパドレスに0.5、3位のジャイアンツに1ゲーム差に詰め寄られている(数字はいずれも20日現在)。
勝利のために打者に専念してきたが、負けが込むと「勝つため」という前提が崩れてしまう。打っても打っても勝利に結び付かないとなると、いったい、何のために投げることを我慢しているのかとなりかねない。
最近の大谷が負け試合の後、さっさと球場を出るのは、少しでも早く生まれたばかりの愛娘の顔を見るためだけとは、とてもじゃないが思えない。投壊にアキれると同時に、投げたくても投げられない現状が腹に据えかねているのではないか。大谷の気持ちの中で張り詰めた糸が、プツンと音を立てて切れないか心配にもなってくるのだ。
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そんな大谷は打ちまくっているにもかかわらず、いまだ死球ゼロ。これは特筆すべき数字と言える。いったいなぜ、大谷は死球を回避できているのか。そこにある「3つの理由」とは。
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