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永田洋光スポーツライター

出版社勤務を経てフリーになり、1988年度からラグビー記事を中心に執筆活動を続けて現在に至る。2007年「勝つことのみが善である 宿澤広朗全戦全勝の哲学」(ぴあ)でミズノスポーツライター賞優秀賞を受賞。近著に近著に「明治大学ラグビー部 勇者の100年」(二見書房)などがある。

ラグビー日本代表 27年W杯に向けて3つの大問題…屋根閉め切り“蒸し風呂”奇策も奏功せず

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チーム成熟へのラストチャンス

 この大会でプールステージを突破するのは各プール上位2チームと、3位チームのなかで勝ち点の多い順に4チーム。それが「ラウンド16」を戦ってベスト8を目指す。

 ちなみにウェールズとの2試合を、W杯で採用されている勝ち点に換算すると、第1戦はジャパンが4ポイントでウェールズは1(7点差以内負け)。ところが第2戦は、ウェールズが5(勝利の4ポイント+4トライ以上獲得の1ポイント)で、ジャパンはゼロ。1勝1敗ながら、2試合でウェールズが6ポイント獲得したのに対して、ジャパンは4ポイントだけ。これはあくまでも試算だが、こうしたディーテイルを見ても、ジャパンはまだ発展途上なのである。

 ジャパンにとって、27年に至るチームの骨格を作り上げる大きなチャンスが、8月30日のカナダ(24位)戦から始まるパシフィックネーションズカップ2025だ。

 この大会は、昨年同様に日本、カナダ、アメリカ(16位)の3カ国と、フィジー(9位)、サモア(13位)、トンガ(19位)の3カ国がそれぞれ総当たり戦を戦い、上位2チームが準決勝で異なるプールの上位チームと対戦するシステムになっている。

 昨季のジャパンは、カナダ、アメリカを破って準決勝でサモアと対戦。これも撃破して決勝でフィジーと対戦したが、17対41で敗れている。

 今年は、仙台で行われるカナダ戦を終えるとアメリカに移動。同国内を転戦しながら9月20日の最終日を迎えることになる。いわば"アメリカ長期合宿"だ。

 しかも、試合ごとに対戦相手のランキングが上がり、決勝戦に勝ち残ってフィジーと対戦できれば世界トップ10の強豪に胸を借りることもできる。

 チームを成熟させるのに格好の日程なのである。

 この機会を利用して、藤原ー李の"超速用ハーフ団"と、斎藤ーサム・グリーンの"コントロールもできるハーフ団"みたいな組み合わせを試すことができれば、選手交代だけでピッチ上の選手にHCの意図を明確に伝えられるようになるのではないか。

 たとえば残り時間30分で藤原-李のコンビが投入されれば、ここから超速へシフトアップというメッセージになるし、ラスト20分で斎藤-グリーンのコンビが投入されれば、勝利に向けてより堅実にプレーすべし、というメッセージになる。

 あくまでもたとえ話ではあるが、今のジョーンズHCに求められるのは、抽象的な言葉ではなく、意図を明確に伝えるような選手起用だろう。

 そして、それこそが今、ラグビーファンが切実に求めるHCのメッセージなのである。

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