「食の本」稲田俊輔著
「食の本」稲田俊輔著
実業家、文筆家、そして料理人でもある著者が、食にまつわる名著についてつづった読書エッセー。
20代後半、著者が最初に飛び込んだのは和食の世界だった。そこでは、大根や里芋の皮は繊維を感じさせないよう厚くむき、下茹でして水にさらした後、改めてダシで煮含めるなど、何から何まで洗練されていた。そんな折に手にした水上勉著「土を喰う日々-わが精進十二ヵ月-」は、信奉していた「プロの世界の繊細な技法」を全否定するかのような価値観で貫かれていた。感化された著者は、勤務先の店で水上流の仕込みを試みる。
以降、嫌いな食べ物や嫌な思い出をつづる千早茜著「わるい食べもの」、や吉田戦車氏のコミック「忍風!肉とめし」など、食の名著25作品を著者との「妄想対話」を繰り広げながら語る。 (集英社 1067円)