(33)母の暮らし先を探すのに「電話の印象」だけが生の手がかり
高齢者施設の紹介業者から、実家の近くで条件に合う有料老人ホームを6軒リストアップしたという連絡があった。電話で施設名、電話番号、そして月々の基本的な費用を伝えられた。すべての施設の利用料金が、月額10万円前後だった。母の遺族年金の範囲内で収まる可能性が高い。
ただ、このやりとりで困ったのは、すべてが電話で行われたことだ。リストをメールや書面で送ってもらえれば確認もしやすく、手元に残すこともできるのだが、それはやっていないという。理由はわからない。業者の名称をインターネットで調べたところ、地元で高齢者向け施設の紹介冊子を発行している老舗の広告代理店だった。施設紹介と仲介の両方を行っているのだろうか。
施設名と連絡先を手帳に控えた後、次はそれぞれの施設に直接電話で問い合わせる必要があった。しかし、この時期はちょうどコロナ禍の制限が厳しく、すべての施設で見学は不可とされていた。現地の様子を確認する手段がまったくない中で、判断を下さなければならないのだ。
問題は、6軒中3軒が公式ウェブサイトを持っておらず、残りの3軒についても、いずれも内容に乏しい印象だったことだ。掲載されているのは、見た目の美しい高齢者と若いスタッフが笑顔でやりとりをしているようなイメージ写真と抽象的な理念の文章が中心で、実際の居室や食事、日々の活動など、具体的な情報はほとんど掲載されていない。