伊万里市民図書館(佐賀県)焼き物の町を支える知のインフラ
江戸時代に肥前(佐賀・長崎県)で焼かれた有田焼は、製品が伊万里港から積み出されたことから「伊万里焼」とも呼ばれ、日本で初めて作られた磁器として知られている。
磁器のふるさとにある伊万里市民図書館は、今月7日に開館30周年を迎えた。構想・建設時から市民の声が館内の随所に反映され、友の会やボランティアが行政と長く協働で図書館運営に携わっている珍しい公共施設。延べ床面積4000平方メートル超の平屋建て(一部3階)だ。
「本の購入予算は年間1500万円から1800万円。選書会議で各担当者が書棚に入れたい本を選んでいます。小さい自治体の図書館ですが、全国から視察にいらしたみなさんには、『本のバランスがいい』と評判がいいです」と言うのは、統括管理者の鴻上哲也さん。
館内にはリラックスできるよう穏やかなBGMが流れているが、静かに読書や勉強したい人には無音のエリアもある。天井が高い開架室の中央にある大きなシンボルツリー(いすの木)は一般向け書架と児童コーナーを仕切っている。子ども開架室に隣接する「のぼりがまのおへや」は、子供たちへのお話し会(毎週土曜日午後2時半~3時)に使われ、外観は焼き物の町らしく、のぼり窯をモチーフにして造られている。
「半地下の穴ぐらみたいな部屋で、電気を消すと天井に天の川が流れるプラネタリウム風のすてきな部屋になっています。もうひとつの自慢は、書斎をイメージして造った土蔵づくりの『伊万里学研究室』。特注の家具や机はすべて木製で気持ちが和らぐ雰囲気の部屋です。ここには伊万里や佐賀県に関するさまざまな郷土資料が揃っており、古伊万里や有田焼、唐津焼などの図録や美術書、中国や韓国の陶磁器に関する資料もあります。数年前、ある会社の社長さんが、ここで熱心に焼き物に関する本を読み漁っていたことがありました。その方は難問解決のヒントを得て、有田焼の万年筆の商品化に成功。平成20(2008)年7月の北海道洞爺湖サミットで、当時の福田康夫総理大臣から各国首脳に贈られました」(鴻上さん)