プロ初の代打満塁ホームランも…涙がこぼれた理由は、歯がゆさと悔しさだった
2009年限りで野村克也監督が退任し、マーティ・ブラウン新監督になった。
普段から明るくて、義理と人情に厚い男。退場の多さ(監督として史上最多の通算12回)でもよく知られ、広島時代は「ベース投げ退場」で話題をさらった。楽天監督時代は投げようとした二塁ベースが抜けなかった、なんて一幕も(9月23日=西武戦)。でも意外と冷静で、選手やスタッフとしっかり対話のできる指揮官だったと思う。
不調でスタメンを外されるときは監督室に呼ばれ、「これからちょっとスタメンを外れることもあるけど、ずっと使わないわけじゃないから安心してくれ」と事前に説明してくれたが、実際にベンチスタートになった5月14日の広島戦(マツダスタジアム)ではちょっとムッとしながらベンチで戦況を見守っていた。
試合は序盤から打ち合いの乱打戦に。3対2で1点リードの六回、2死満塁の場面で代打として送り出された。
投手は速球派左腕のスタルツ。打席に向かいながら、「スタメンを外された俺が何で行かなきゃいけねえんだよ」と少しふてくされていた。
3ボール1ストライクから右翼席にスタンドイン。代打満塁本塁打を打ったのはプロ初だったけれど、俺は笑顔なくベンチでハイタッチ。ブラウン監督に「ほら、俺を使っておけば……」とブツブツ言いながらベンチ裏へ向かった。ミラールームを通り過ぎてロッカーに引き揚げながら、調子が上がらない自分に対する歯がゆさと悔しさがこみ上げてきた。
「はあ、イライラする。何でスタメンで出られないんだろう……」
思いを巡らせているうち、目から涙がポロリ。泣いているところを誰にも見られたくなくて、こっそり涙を拭った。本塁打を打ったくらいで泣いとっちゃいかん(笑)。
ちなみにその後、ブラウン監督はまたスタメンに戻してくれた。
マーティに負けず劣らずの大立ち回りで迷惑もかけた。白井(一行)球審との一件だ。
7月27日、熊本県藤崎台球場でのソフトバンク戦。1対1の同点で迎えた五回、1死走者なしの場面で3度目の打席が回ってきた。
投手はホールトン。1ボール1ストライクからの3球目、俺はアウトコースのボールをグッとこらえてバットを止めたが、ストライクとコールされた。ハーフスイングこそ取られなかったが、ゾーンを外れている自信があった。
カチンときた俺は打席を外してこう言った。
「今のスライダーはどう見てもボールだろ!」
「入ってますよ!」
「入ってねえだろ!」
白井球審に詰め寄る俺を、一塁コーチの永池(恭男)が必死に制す中、ブラウン監督もベンチから飛び出してきて、こう言うのだ。
「まだ中盤で同点だ。4番がいなくなっては困る。ここは我慢するんだ」
熱血漢のブラウン監督に冷静になだめられちゃあ、俺も矛を収めるしかない。ところが、仕切り直した直後の4球目、内角高めの球を悠然と見逃すと、白井球審は高々と「ストライーク!」とコールした。(つづく)
※このたびは家族のことでご迷惑をおかけしました。



















