元関脇嘉風・中村親方〈1〉なぜ「朝稽古をしない」のか? 角界の常識から“あえて外れる”部屋づくり
午前中のトレーニングは部屋から徒歩1分の隅田川テラス
吉田 午前中のトレーニングは、具体的にどのようなことを行っていますか?
中村 ラダー(はしご)を使ってステップを踏む瞬発力を養うアジリティートレーニングや、短距離ダッシュ、階段ダッシュ、反復横跳び、ハードルジャンプなどを1時間から1時間半かけて行っています。
吉田 どこでやっているのですか?
中村 (広場や遊歩道がある)隅田川テラスが部屋から徒歩1分なので、ランニングやウオーキングをしている人の邪魔にならないように、ですね。力士は体が大きいので、足首や膝に負担がかからないように配慮してメニューを組んでいます。専門家の方に来てもらって、コーチングしてもらうこともあります。
吉田 午前中は稽古場の土俵は使っていない?
中村 基本は使っていませんが、使う時もある。一貫性がないと言われるかもしれませんが(笑)。午前トレーニング、午後に稽古というのも、状況次第ですね。例えば7月の名古屋場所は誰もが知っている通り、猛暑日が多い。そのため、気温が上がる前の午前に稽古をし、日が落ちる夕方にアジリティーをしていました。気候や力士の体調に合わせてスケジュールを組んでいます。
吉田 試行錯誤の2年間、ですね。
中村 僕は決して相撲界の常識を疑っているわけではないんです。ただ、いろいろなものを取り入れたい、という気持ちは昔から強かった。ラグビーやアメフト、陸上などの他競技からも、「何か強くなるヒントはないか」と目を配っていますし、僕も現役時代は「相撲が強くなるヒントはどこにでもある」と思ってやっていましたから。
吉田 試してみたけど、これは合わないからやめよう、となったことも?
中村 「これは必要なのかなあ?」と疑問が出たものはやめています。もし、弟子が「このトレーニングはやめましょう」「これは嫌です」と言ってくれば、やめます。ありがたいことにそうしたケースは今までありませんが……。これは「甘え」と言われるかもしれませんが、力士が疲れて士気が下がっているなと思ったら、躊躇なく休ませます。力士も人それぞれで、アメとムチのアメで伸びる子もいれば、逆のパターンもある。弟子一人一人とどう向き合っていくかも含め、試行錯誤しながらの2年間だったと思います。 =つづく
(構成=本紙日刊ゲンダイ編集部)
▽中村雅継(なかむら・まさつぐ)本名は大西雅継。1982年、大分県佐伯市出身。2004年に尾車部屋に入門し、同年1月場所が初土俵。05年新十両、06年新入幕。19年に引退するまで、長く幕内の土俵を務めた。現役通算94場所で、649勝642敗30休。三賞10回、金星8個。最高位は関脇。


















