「ビデオは語る 福島原発 緊迫の3日間」東京新聞原発取材班編
福島第1原発の事故から約1年半が経った2012年8月、東電は本店と現地の対策本部を結んだテレビ会議のビデオ映像を公開した。全部でおよそ150時間、その3分の1は音声も付いていた。その間に3号機が水素爆発し、2号機も急速に状態悪化したのである。ビデオの視聴は報道関係者だけに限定された。国、大株主の東京都、報道関係者はより広い公開を求めたが、東電が拒んだ。
一般向けの抜粋版は公開されたが、これはあまりに短く、情報も不十分。報道機関に対してもコピーは一切許さず、限られた場で見るだけだった。報道各社の中にはアルバイト学生に任せて文字起こしさせただけのところもあったという。しかし東京新聞では10人の記者を投入し、手分けして音声を文字起こしし、記事にした。それが同紙ならではの積極的な原発報道の背景になったのだ。B5判350ページにのぼる膨大な記録は、これこそ後世が最も必要とする生の記録だ。東電会長はこう言った。
「水素(爆発)の問題? 国民を騒がせるのがよいのか。次の会見で聞かれたら、否定するよ」
(東京新聞 1600円)