「ニッポン景観論」アレックス・カー著

公開日: 更新日:

 1964年、父親の赴任先だった日本に降り立って以来、半世紀にわたって日本の変化を見つめ続けてきた氏が、国内各地で撮影した景観破壊の現実を紹介しながら、その国家的損失を指摘するビジュアルリポート。以前、著者が京都で古い町家を改装した宿泊施設を運営していたとき、外国人の旅行者が、頭上に電線が張り巡らされた町を見て、「京都ってインドみたいな所なんですね」と言ったという。

 京都などの観光名所では、敷地内の景観は丁寧に保存されているが、本来、景観は街並み単位で考えるもの。先進国で、電線の埋設が進んでいないのは日本だけだとその無法地帯ぶりにあきれる。さらに建築物に関しては規制するのに、携帯基地局に関しては何も規制がないと、のどかな田園風景を台無しにする携帯基地局や電力会社の巨大な鉄塔などにも言及する。

 続いて、街中にあふれる看板が経済効果を上げるどころかその場の価値を台無しにしている実態を取り上げ、美化をうたう看板自体が町を汚していると手厳しい。確かに、市民グループの要望で由布院の駅前の銀行が看板の高さを低くした例を見ると、その違いは顕著だ。看板ひとつに気を配るだけで、景観はガ然、品格と落ち着きを取り戻す。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    西武フロントの致命的欠陥…功労者の引き留めベタ、補強すら空振り連発の悲惨

    西武フロントの致命的欠陥…功労者の引き留めベタ、補強すら空振り連発の悲惨

  2. 2
    西武の単独最下位は誰のせい? 若手野手の惨状に「松井監督は二軍で誰を育てた?」の痛烈批判

    西武の単独最下位は誰のせい? 若手野手の惨状に「松井監督は二軍で誰を育てた?」の痛烈批判

  3. 3
    巨人・小林誠司の先制決勝適時打を生んだ「死に物狂い」なLINE自撮り動画

    巨人・小林誠司の先制決勝適時打を生んだ「死に物狂い」なLINE自撮り動画

  4. 4
    全国紙が全国紙でなくなる?「新聞販売店」倒産急増の背景…発行部数の激減、人手不足も一因に

    全国紙が全国紙でなくなる?「新聞販売店」倒産急増の背景…発行部数の激減、人手不足も一因に

  5. 5
    花巻東時代は食トレに苦戦、残した弁当を放置してカビだらけにしたことも

    花巻東時代は食トレに苦戦、残した弁当を放置してカビだらけにしたことも

  1. 6
    日本ハムは過去2年より期待できそう 新外国人レイエスが見せつけた恐るべきパワー

    日本ハムは過去2年より期待できそう 新外国人レイエスが見せつけた恐るべきパワー

  2. 7
    大谷はアスリートだった両親の元、「ずいぶんしっかりした顔つき」で産まれてきた

    大谷はアスリートだった両親の元、「ずいぶんしっかりした顔つき」で産まれてきた

  3. 8
    【中日編】立浪監督が「秘密兵器」に挙げた意外な名前

    【中日編】立浪監督が「秘密兵器」に挙げた意外な名前

  4. 9
    WBCの試合後でも大谷が227キロのバーベルを軽々と持ち上げる姿にヌートバーは舌を巻いた

    WBCの試合後でも大谷が227キロのバーベルを軽々と持ち上げる姿にヌートバーは舌を巻いた

  5. 10
    裏金自民に大逆風! 衆院3補選の「天王山」島根1区で岸田首相の“サクラ”動員演説は大失敗

    裏金自民に大逆風! 衆院3補選の「天王山」島根1区で岸田首相の“サクラ”動員演説は大失敗