「街場の戦争論」内田樹著

公開日: 更新日:

「僕たちが今いるのは、二つの戦争つまり『負けた戦争』と『これから起こる次の戦争』にはさまれた戦争間期ではないか」

 そんな著者の皮膚感覚が、この本の土台にある。前の戦争で失ったものを問い直すことなく経済最優先で突っ走り、アメリカの従属国であることにあまりにも無自覚。改憲、特定秘密保護法、集団的自衛権と、国を危機に陥れる政策ばかり推し進める安倍政権を支持する多数の国民。かくして日本は「戦争のできる国」になろうとしている。
 この国はなぜこんなふうになってしまったのか。独自の視座から今を読み解き、知的想像力を働かせて近未来を予測する。

 前の戦争で、日本は自力では敗北の検証ができないほど、ひどい負け方をした。そして主権を失ったまま70年もの間、「主権国家のように振る舞ってきた」との指摘に目を開かされる。日本は主権国家ではないと考えれば、この国で起きているおかしなことの説明がつく。

 このままでは「たぶんろくでもないことが起こるだろう」という禍々しい予感が杞憂に終わることを、著者自身も念じている。思考停止状態から覚醒し、愚かな選択をしないために、全ての日本人が今読むべき価値ある一冊。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    立花孝志容疑者を"担ぎ出した"とやり玉に…中田敦彦、ホリエモン、太田光のスタンスと逃げ腰に批判殺到

  2. 2

    片山さつき財務相“苦しい”言い訳再び…「把握」しながら「失念」などありえない

  3. 3

    阪神異例人事「和田元監督がヘッド就任」の舞台裏…藤川監督はコーチ陣に不満を募らせていた

  4. 4

    阪神・佐藤輝明にライバル球団は戦々恐々…甲子園でのGG初受賞にこれだけの価値

  5. 5

    高市首相「世界の真ん中で咲き誇る日本外交」どこへ? 中国、北朝鮮、ロシアからナメられっぱなしで早くもドン詰まり

  1. 6

    “文春砲”で不倫バレ柳裕也の中日残留に飛び交う憶測…巨人はソフトB有原まで逃しFA戦線いきなり2敗

  2. 7

    阪神・佐藤輝明の侍J選外は“緊急辞退”だった!「今オフメジャー説」に球界ザワつく

  3. 8

    ドジャースからWBC侍J入りは「打者・大谷翔平」のみか…山本由伸は「慎重に検討」、朗希は“余裕なし”

  4. 9

    阪神の日本シリーズ敗退は藤川監督の“自滅”だった…自軍にまで「情報隠し」で選手負担激増の本末転倒

  5. 10

    古川琴音“旧ジャニ御用達”も当然の「驚異の女優IQの高さ」と共演者の魅力を最大限に引き出すプロ根性