「フォルトゥナの瞳」百田尚樹著

公開日: 更新日:

 主人公は、幼い頃に両親と妹を亡くし、孤独に生きてきた木山慎一郎。中学卒業後勤めていた工場が倒産し、フリーター生活を続けていたところ、車を磨くコーティング会社の社長に拾われる。結婚もせず恋人をつくることもあきらめたまま、ひたすら仕事に没頭する日々だったが、ある日電車の中で手が透き通っている男を見かけてから、どうやら自分には他人の死の予兆を察知する力があるらしいと気づく。木山は、その力を他人の命を助けることに使おうとするが、人を救うたびに自らの体がむしばまれていく。仕事の腕も認められて無事に独り立ちを果たし、恋人もできてようやく幸福が見えてきた矢先、木山は自分の力をどう使うべきなのか、選択に迫られるのだが……。

 本書は、ローマ神話に出てくる人間の運命が見える女神「フォルトゥナ」の瞳を持ってしまった人間が、他人の運命に介入して死を回避できないかと葛藤する物語。

 他人の命を救って誰にも気づかれないばかりか、自己犠牲まで伴う場合にどんな選択が可能なのか。ひとりの人間として自分の有限の命をどう使うのかと読者に問いかけてくる。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    阪神・梅野がFA流出危機!チーム内外で波紋呼ぶ起用法…優勝M点灯も“蟻の一穴”になりかねないモチベーション低下

  2. 2

    梅野隆太郎は崖っぷち…阪神顧問・岡田彰布氏が指摘した「坂本誠志郎で捕手一本化」の裏側

  3. 3

    「高市早苗首相」誕生睨み復権狙い…旧安倍派幹部“オレがオレが”の露出増で主導権争いの醜悪

  4. 4

    巨人・戸郷翔征は「新妻」が不振の原因だった? FA加入の甲斐拓也と“別れて”から2連勝

  5. 5

    国民民主党「選挙違反疑惑」女性議員“首切り”カウントダウン…玉木代表ようやく「厳正処分」言及

  1. 6

    時効だから言うが…巨人は俺への「必ず1、2位で指名する」の“確約”を反故にした

  2. 7

    パナソニックHDが1万人削減へ…営業利益18%増4265億円の黒字でもリストラ急ぐ理由

  3. 8

    ドジャース大谷翔平が3年連続本塁打王と引き換えに更新しそうな「自己ワースト記録」

  4. 9

    デマと誹謗中傷で混乱続く兵庫県政…記者が斎藤元彦県知事に「職員、県議が萎縮」と異例の訴え

  5. 10

    阪神に「ポスティングで戦力外」の好循環…藤浪晋太郎&青柳晃洋が他球団流出も波風立たず