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「笹の舟で海をわたる」角田光代著

 朝鮮戦争の好景気に活気づく東京・銀座のデパートで、勤め帰りの左織は、同年代の見知らぬ若い女性に声をかけられる。風美子と名乗る女性は、戦時中、いじめが横行した学童疎開先で、左織に優しくしてもらったのだという。だが、少女時代の過酷な記憶を心の奥にしまい込んでいた左織は、思い出すことができない。

 それでも、この偶然の出会いをきっかけに2人は親しくなり、ついに義理の姉妹になる。左織の夫の実弟と風美子が結婚したのだ。

 疎開体験を共有する2人だが、戦後は全く違う人生を歩むことになる。

 左織は2人の子を持つ専業主婦。戦争で家族を全て失った風美子は自分の力で這い上がり、料理研究家として脚光を浴びる。保守的で自分の意見を持たない左織には、風美子の生き方がまぶしい。自分の家庭に深く入り込み、反抗的な娘が自分より風美子になついていることに嫉妬を覚える。最初の出会いは本当に偶然だったのか?左織は疑念をぬぐいきれない。

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