「透明カメレオン」道尾秀介氏

公開日: 更新日:

 ラジオのパーソナリティーの恭太郎が行きつけのバーで飲んでいた時、びしょ濡れの美女、恵が飛び込んできて、「コースター」とつぶやいた。だが、常連客の百花は「殺した、って言ったんじゃないのかな」。恵の、ウソか本当かわからない話に乗せられて、恭太郎らが〈殺害計画〉に加担させられていくというミステリーだ。

「主人公をラジオのパーソナリティーにしたのは、ラジオが好きなので、作品に使ってみたいという気持ちがあったからです。ラジオ放送の特徴として、音だけで素顔が見えないということがありますが、登場人物の造形として、ここにギャップをつくったらおもしろいなと。声だけだと人はけっこうウソをつけるんですよね。映像だと一瞬で大量の情報を伝えてしまうので、本質の部分が負けてしまう」

 恭太郎は魅力的な声の持ち主だが、ちんちくりんでルックスは全然イケてない。ところがその声に幻惑された恵が、あろうことかゲイバーのホステス、レイカを恭太郎だと思いこむ。〈想像どおり〉の人だと。恭太郎はそれを利用して実像を隠そうとするが、だまされたと知って逆上した恵に、父のかたき討ちに引きずりこまれ、墓地で怪しい人物に追いかけられたり、夜間の山道でライトなしでカーチェイスを繰り広げる羽目になる。そのきっかけになったのは、恭太郎のイメージという、一種のウソなのだ。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    高画質は必要ない? 民放各社が撤退検討と報じられた「BS4K」はなぜ失敗したのですか?

  2. 2

    大手家電量販店の創業家がトップに君臨する功罪…ビック、ノジマに続きヨドバシも下請法違反

  3. 3

    落合監督は投手起用に一切ノータッチ。全面的に任せられたオレはやりがいと緊張感があった

  4. 4

    自民党総裁選の“本命”小泉進次郎氏に「不出馬説」が流れた背景

  5. 5

    「二股不倫」永野芽郁の“第3の男”か? 坂口健太郎の業界評…さらに「別の男」が出てくる可能性は

  1. 6

    今思えばあの時から…落合博満さんが“秘密主義”になったワケ

  2. 7

    世界陸上「前髪あり」今田美桜にファンがうなる 「中森明菜の若かりし頃を彷彿」の相似性

  3. 8

    三谷幸喜がスポーツ強豪校だった世田谷学園を選んだワケ 4年前に理系コースを新設した進学校

  4. 9

    広陵暴力問題の闇…名門大学の推薦取り消し相次ぎ、中井監督の母校・大商大が「落ち穂拾い」

  5. 10

    佐々木朗希いったい何様? ロッテ球団スタッフ3人引き抜きメジャー帯同の波紋